arayashiki

本橋成一監督の『アラヤシキの住人たち』は、田舎の共働学舎で共同生活している個性ある住民たちの日常生活を一年間に渡って記録したドキュメンタリーである。

北アルプスの山裾にある長野県小谷村。谷間の山道を一時間半歩いた先にある「真木共働学舎」は、自由学園の教師だった宮嶋眞一郎によって40年前に創設された。二階建ての茅葺きの家で、20代から60代までの男女数人が共同生活を送っている。

住んでいるのは一癖も二癖もあるような人たちだ。ゆったりとした時間が流れるなか、彼らはヤギや鶏などと共に暮らしている。映画の前半は彼らの日常生活をゆるいテンポで紹介していく。とりたてて大事件が起きるわけでもない。人間観察をしているような雰囲気だ。それぞれがそれぞれの時間を過ごしている。

さて、アラヤシキとは何なのか。ここを巣立っていくことも許されるし、ここに留まり続けることも許される場所なのだ。だが、そこには葛藤がないわけではない。時には議論をし、時には相手を許せないこともあるだろう。そんな住民たちを見ていると、人間の生きる意味といった根本的な問題までも考えさせられてしまう。

(2015年11月29日午後4時20分、サロンシネマ、食と農の映画祭)(矢澤利弘)