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ⓒ2015「種まく旅人 くにうみの郷」製作委員会


篠原哲雄監督の『種まく旅人 くにうみの郷』は、アメリカ帰りの女性農林水産省官僚が、地域調査官として訪れた淡路島で出会った玉ねぎ農家の兄と海苔作りを生業とする漁業者の弟というふたりの若者との交流を描く。

頭でっかちの官僚が、人々と触れ合ううちに現場の問題点と真の姿を知り、粉骨砕身、大活躍するというパターンの映画は少なくない。この映画の主人公、神野恵子も当初は現地の人々からは煙たがられるが、徐々に周囲からの支持を得ていく。

面白いのは、兄弟の仕事がそれぞれ農業と漁業で、いがみ合っていること。日本神話の海彦・山彦のような設定だ。飛び抜けて印象的なシーンやカットは見当たらないが、それとは裏腹に手堅い演出で安定的な作品に仕上がっている。


(2015年12月2日午後3時20分、サロンシネマ、食と農の映画祭)(矢澤利弘)