素晴らしきボッカッチョ


 パオロ&ヴィットリオ・タビアーニ監督の『素晴らしきボッカッチョ』は、ボッカッチョの『デカメロン』をベースに、ペストが猛威をふるうフィレンツェを離れて郊外の屋敷で共同生活を始めた男女10人が、退屈しのぎに10日の間に毎日一人ずつ10話の物語を披露する物語である。

 本作は5話のオムニバスになっている。騎士は愛する女性の遺体に添い寝すると、彼女は蘇る(第1話)。まぬけな画工が、仲間のたくらみで、姿が見えなくなる石を拾ったと思い込まされる(第2話)。ある貴族が娘の恋人を殺し、その心臓を金杯に入れて娘に贈る(第3話)。男を連れ込んでいたことがバレた修道女が懲罰を受けることになったが、実は院長も男を連れ込んでいたことが分かる(第4話)。鷹と貧しい生活をしている騎士が、再会を果たした愛する女性から思いがけない願い事をされる(第5話)。こうしたエピソードが光と影を見事にとらえたシモーネ・ザンパーニの撮影で紡がれていく。10日後、雨が降り出すなか、それぞれが別れを告げ、町に旅立っていく。コミカルなものからシリアスなものまで、エピソードの選択もバランスがいい。


(2016年4月29日午後6時30分、有楽町朝日ホール)(矢澤利弘)

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2015-10-21