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 広島国際映画祭2016では11日、ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭の過年度受賞作品2本が上映された。上映に先立つプレゼンテーションで、同中編映画祭のディレクターエルザ・シャルビ氏は「中編は情熱を掻き立てられるフォーマットです。短編映画のクリエイティビティを秘めており、長編映画にも近くなっていく。中編映画祭は新しい才能を発見する場となっています」と語り、同中編映画祭の重要性を強調した。

 ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭は、フランス映画監督協会によって2004年に創設された。一般に、長編映画を対象にした映画祭が多く、短編映画に特化した映画祭も少なくない。そうしたなか、ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭で扱われる中編映画とは30〜60分の尺の映画であり、短編にも長編にも属さないという点で、映画祭でも上映されず、また劇場公開も困難なため、普及されないフォーマットだった。そうした中間的な領域の映画に焦点を当てたのが、この映画祭なのだという。

 シャルビ氏は、「1時間を1分でも超えると長編映画に分類されます。それだと、上映してもらうのが難しくなります。そもそも、プログラムを組む側として、5分の作品と50分の作品を同じ土俵で選ぶのが難しいのです。中編でもドキュメンタリーの場合は需要はあるのですが、フィクションで30分から35分を超えると普及させるのが難しくなります。映画にとって、上映時間は本質的な問題だと思います。中編が良いと思われるプロジェクトはなかなか困難な道を歩みます。映画を作るにはそれなりの資金も必要ですが、中編映画はなかなか映画館にはかけられないのです」と説明した。

 フランスには中編映画に対する助成制度があるというが、シャルビ氏の指摘するように、中編映画は確かに「帯に短し襷(たすき)に長し」といった側面が否定できないフォーマットだといえる。ブリィヴ・ヨーロッパ中編映画祭は一般に無視され続けてきた中編というフォーマットを再評価する貴重な映画祭である。


(2016年11月11日、午後10時、NTTクレドホール、広島国際映画祭)(矢澤利弘)