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現在開催中の広島国際映画祭2016では12日、西川美和監督の『蛇イチゴ』が上映され、上映後にはトークショーが行われた。

『蛇イチゴ』は西川監督の監督デビュー作品。27歳のときにシナリオを書いた。この映画が作られたきっかけは西川監督が見た夢だった。「方々で人を殺した犬をある家で飼いだしてしまう。そうすると夫婦仲や家族関係が円滑になっていく。しかし、連続殺人の犬がいるという報道を見て、犬を保健所に引き渡すことになるという夢がベースになっています。犬では話にならないので、殺人を犯した少年という設定ではじめにシナリオを書きました。しかし、それだと3億円ぐらい予算がかかり、3時間30分ぐらいの長さになるのでお蔵入りさせました。のちに映画化の話をいただいたときに、香典泥棒の兄という話に書き換えました」と西川監督。

「みんなが正しく生きようとすればするほどうまくいかなくなる。中身が重たいほど、作品のテイストとしては笑いなどを入れるようにした」と説明する。

西川監督は広島市安佐南区出身。子供の頃からバスに乗ってよく映画を見に行っていたという。「あの頃は二本立てが多くて、一日中見ていました。洋画を見に行ったりするのが楽しかった。広島では周りに映画関係者などいませんでした。文章を書く仕事をしたくて、東京の大学に進学しましたが、東京では、周囲の人々はいろいろなことを(自分より)よく知っていました。映画に携わっていければと思い、ぬるっと映画の世界に入りました。いきがかりで監督になりました。お金や人を抱えるので、それなりの重圧もありますし、いろいろとしんどいこともあります。自分のアイデアが潰えたら終わりという不安もあります。何の後ろ盾もないという不安感もありますが、楽しさを忘れたことはありません。好きであれば迷わず突き進むべきです」

西川監督は他人の原作を映画化するのではなく、オリジナルな作品をコンスタントに作り続けている。現在公開中の『永い言い訳』も西川監督自身が書いた小説を映像化したものだ。その次の作品について、西川監督は「アイデアが出てくるのは予測不能です。いつ浮かんでくれるのかは自分でもわかりません。(映画の公開が終わると)急に無職になってしまうので、(次の作品も)考えないといけないと思っています」と次回作への展望をのぞかせた。


(2016年11月12日午後6時、NTTクレドホール、広島国際映画祭)(矢澤利弘)