
広島国際映画祭2016では13日午後1時からホアキン・デル・パソ監督のメキシコ映画『ある金曜日』が上映され、上映後には同監督による質疑応答が行われた。
同作品は、メキシコシティの寂れた建設機械工場を舞台に、予期せぬ出来事に直面した従業員たちの不条理な行動を描く。社長が死んでいるのが見つかり、会社が倒産していることが発覚した工場の従業員たちは、社長の死を隠蔽し、信じられないような解決策を取ろうとする。
この映画では、急変する状況に混乱する人々が活写されている。「メーンテーマは変化への怖れ、人生の不安定です」とデル・パソ監督は説明する。劇中で登場する会計士がなんども言う「人生におけるパニックを楽しめ」というセリフがキーワードだという。
映画で見る限り、緊急事態が発生したときのメンタリティーは日本人とメキシコ人でだいぶ違うようだ。デル・パソ監督は、「特に仕事に対する姿勢が違う。両国とも勤勉だが、メキシコ人は自分の幸福をまず考える。もっとも、休日前に酒やダンスを好むのは日本でもメキシコでも同じだろう」と二つの国を比較してみせる。
『ある金曜日』のオリジナルタイトル「マキナリア・パンアメリカーナ」は映画の登場人物たちが勤務する会社の名前だ。これは「会社や場所が1つのキャラクターだと考えたから」。
映画のなかで、工場で働く人々はプロの役者ではなく、実際にそこで働いている人々が出演しており、そうしたことなどもリアリティを醸し出すひとつの要因となっているようだ。
(2016年11月13日午後1時、NTTクレドホール、広島国際映画祭)(矢澤利弘)