
「HIROSHIMA MUSICA SERIES VOL.II−小蔦寛二と仲間たちによる室内楽の午後−」が26日、広島市中区のエリザベト音楽大学ザビエルホールであった。
小蔦寛二さんは広島県出身。東京藝術大学音楽学部器楽科ピアノ専攻、同大学院修士課程を修了。大学院在学中よりドイツに渡り、国立ハノーファー音楽大学、カッセル市立音楽院、国立ベルリン芸術大学大学院を修了。広島を拠点に、欧州と日本各地でソロリサイタルを行う他、広島交響楽団とはピアノ協奏曲で共演している。
今回は、2012年ブダペスト・ショパン国際コンクール優勝などの実績のある妻の小蔦花結さん(ピアノ)、広島交響楽団コンサートミストレスの蔵川瑠美さん(バイオリン)、呉市文化財団登録アーティストとして小蔦寛二さんとデュオを結成している川岡光一さん(チェロ)が出演した。
プログラムのはじめは、小蔦夫妻によるピアノ連弾で、メンデルスゾーンのアンダンテと華麗なるアレグロイ長調作品92。1台のグランドピアノを2人で弾き、息のぴったりあった寄り添った演奏が観客に感動を与えた。夫婦ともに素晴らしい実績のある超一流のピアニストであり、今後の活躍がますます期待される。
2曲目は、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調作品49。演奏はバイオリンが蔵川さん、チェロが川岡さん、ピアノは小蔦花結さん。高い音を響かせるときは、バイオリンを特に高く構え、美しい音色をホールいっぱいに飛ばすバイオリンの演奏が印象的だ。ピアノとチェロも情熱的で力強い。
演奏の合間には、今回のコンサートに向けてのエピソードを各演奏者が披露した。小蔦夫妻は、留学先のドイツで知り合い結婚し、2015年に帰国して広島の江田島に居を構えている。昨年の10月末に第1子が生まれたばかりで、今回が出産後初の演奏会だ。赤ちゃんを寝かしつけ、育児の合間にピアノの練習を行ってきた。花結さんは、出産前は産後4カ月であれば、演奏会に出演できるだろうと思っていたが、実際にやってみると想像以上の苦労があったと心情を吐露。だが、「今日、たくさんの観客が演奏会に来てくれて、これまで大変だったことも忘れてしまいました」とにこやかに話していた。
小蔦寛二さんと蔵川さんは東京藝術大学の同級生。大学時代は交流はなかったが、小蔦さんが広島交響楽団の演奏会のソリストとして参加したことがきっかけとなり、今日の共演につながった。
蔵川さんによれば、リハーサルのため、小蔦家の実家があり今も夫妻が暮らす広島の江田島まで船で行ったが、自然豊かな江田島という地から、世界で活躍するピアニストが生まれ育ったことに感銘を受けたとのこと。
川岡さんは、「チェロと釣り竿をもって江田島に行き、リハーサル後に釣りをしたが、残念ながら釣りのほうの成果はなかった」と語り、会場からの笑いを誘った。
3曲目は、ブラームスのピアノ三重奏曲第1番ロ長調作品8。演奏はバイオリンが蔵川さん、チェロが川岡さん、ピアノが小蔦寛二さん。約40分間にわたる長い演奏だったが、3人の演奏の素晴らしさに惹き付けられ、もっと聴いていたいと感じた観客も多かったのではないだろうか。
アンコールの1曲目はエルガーの愛の挨拶(バイオリンが蔵川さん、チェロが川岡さん、ピアノが小蔦寛二さん)。2曲目はドボルザークのスラブ舞曲より(ピアノ小蔦夫妻)。感動のため息と満席の会場からの拍手喝采で2時間の演奏会は幕を閉じた。
(2017年2月26日、広島市中区エリザベト音楽大学ザビエルホール)(城所美智子)
