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 広島市出身で、フランスのドミニク・ペカット国際コンクール2016のバイオリン部門で優勝した正戸里佳さんのリサイタルが4日、広島市西区の広島市西区民文化センターホールであった。深紅のドレスをまとった正戸さんは、ときには明るく軽やかに、ときには激しく力強く、渡仏9年で磨きをかけたバイオリンの演奏を変幻自在に披露し、500人を超える聴衆を惹き付けた。
 使用楽器は1710年製ジュゼッペ・グァルネリ(フィリウス・アンドレア)。共演のピアニストはフランスのランス在住の望月優芽子さん。


 プログラムはフランスの作曲家の作品を中心に構成。リサイタルはリリー・ブーランジェ(フランス)の「ノクターン」で幕を開けた。続いて、イーゴリ・ストラヴィンスキー(ロシア)の「イタリア組曲」、ウジェーヌ・イザイ(ベルギー)の「無伴奏ヴァイオリンソナタOp.27No.3バラード」、ダリウス・ミヨー(フランス)の「春Op.18」、パブロ・デ・サラサーテ(スペイン)の「ツィゴイネルワイゼンOp.20」、クロード・ドビュッシー(フランス)の「ヴァイオリンソナタト短調」、ジュール・マスネ(フランス)の「タイスの瞑想曲」、モーリス・ラヴェルの「ツィガーヌ」を披露した。

 おなじみの名曲も多いが、ブーランジェ「ノクターン」やミヨー「春Op.18」などは、「日本ではなかなか演奏を聴く機会がない曲目で、今回はじめてこの曲を聴くというお客様が多いかもしれない」と正戸さん。フランスを拠点とする正戸さんならではの選曲だった。

 アンコールは、クロード・ドビュッシー(フランス)の「亜麻色の髪の乙女」、ガブリエル・フォーレ(フランス)の「夢のあとに」。地元の広島では注目度が高く、チケットは完売となった。フランスの情景を彷彿とさせるような豊かな音の響きに包まれ、観客たちは至福のときを過ごしたようだ。

 正戸さんは桐朋学園女子高等学校音楽科を卒業後、同大学ソリスト・ディプロマを経て2009年に渡仏。パリ国立高等音楽院修士課程を卒業後、同音楽院アーティスト・ディプロマコースを修了。2016年にはザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学院アーティストコースを修了。現在はパリを中心にヨーロッパで活動している。


(2017年3月4日 広島市西区民文化センターホール)(城所美智子)