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 映画コメンテーターの鈴木由貴子さんによる映画講座「あなたも映画通−シネマに見る恋愛術−」が25日、広島市映像文化ライブラリー(広島市)であった。古典的作品から最新作まで、テーマごとに多くの恋愛映画の見どころや裏話が小気味よく紹介され、受講者は恋愛映画の奥深い世界を堪能した。

 鈴木さんが恋愛映画の原点と推すフランコ・ゼフィレッリ監督の『ロミオとジュリエット』(1968)を皮切りに、年少の恋を描く『小さな恋のメロディ』(1971)、同性愛を描いた『キャロル』(2016)や『ブローク・バック・マウンテン』(2005)など、講座ではいくつかのテーマに従って、多くの恋愛映画が紹介された。

 『風と共に去りぬ』(1952)や『タイタニック』(1997)は女性の自立を描いた作品だからこそ素晴らしいと鈴木さん。フェデリコ・フェリーニ監督の『道』、アメリカン・ニューシネマの代表作『卒業』(1967)など、「恋愛には障害があるといい」と説明する。続いて、戦時下の愛がテーマになっているイタリア映画の名作『ひまわり』(1970)や『離愁』(1975)などが紹介されると、比較的年齢の高い層の観客は、自分自身の恋愛体験を映画に重ねて、過去を懐かしんでいたようだ。

 一方、『恋に落ちて』(1984)や『マディソン郡の橋』(1995)、『失楽園』(1997)、『危険な情事』(1997)など、中年の不倫を描いた作品の恋愛は、「誰かを犠牲にする」と鈴木さんは指摘する。

 鈴木さんは、見返りを求めない愛情を描いたチャップリンの『街の灯』を究極の恋愛映画だと位置づけ、現在公開中の『ラ・ラ・ランド』(2016)は、この1年のベストワンだと推した。恋愛は映画の普遍的テーマであり、今回の講座は受講者にとって今後の映画鑑賞の参考になることだろう。


(2017年3月25日、午後2時、広島市映像文化ライブラリー)(矢澤利弘)