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 バイオリンのフレデリック・ペラシーとピアノの藤野ゆかりのデュオリサイタルが4日、広島県東広島市の東広島芸術文化ホールくらら小ホールであった。2人ともフランスを拠点として主にヨーロッパで活躍している音楽家で、コンビを組んで今年で21年となる。タイトル「Parfum de France〜フランスの香り〜」のとおり、プーランク、ラヴェル、フランクといったフランスで活躍した作曲家の曲を中心に演奏した。

 前半は、フランシス・プーランクの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」とモーリス・ラヴェルの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第2番ト長調」を演奏。緊張感が漂うバイオリンとピアノの掛け合いが続く。コンビを組んでからの歴史の長さを感じる、息のあった演奏だ。プーランクの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタ」の第3楽章のピアノの最後の1音が長い時間、幻想的にホールに響き渡った。

 休憩時間を挟んでインタビューコーナーがあった。藤野によれば「コンビ結成のきっかけは、偶然」。21年前に、ペラシーの伴奏をする予定だったピアニストが急遽キャンセルとなり、代わりに藤野がピアノ伴奏をすることになった。ふたりで演奏してみると波長が合うことがわかり、それ以来コンビを組んで演奏するようになった。

 「20年以上活動をともにしてきて、よかったと感じることは?」との質問にペラシーは「音楽の方向性が同じであり、藤野さんと一緒に演奏することは大きな喜び。そして、気が合う」とのこと。 「フランス音楽の魅力は?」と聞かれた藤野は、「フランスの曲は、色彩感が豊かなので、今日の演奏でも曲の色彩感を楽しんでほしい」と答えた。

 後半は、ヘンリク・ヴィエニャフスキの「華麗なるポロネーズ第1番ニ長調作品4」で華々しく幕を開け、セザール・フランクの「ピアノとヴァイオリンのためのソナタイ長調」で輝かしいフィナーレを迎えた。 アンコールにはジュール・マスネの「タイスの瞑想曲」とフリッツ・クライスラーの「愛の悲しみ」の2曲を演奏した。

  東広島芸術文化ホールくららは1年前の2016年4月にオープン。音がよく響くと評判が高い。小ホールの内装は、黒と茶色を基調とし、ホール全体から落ち着いた深みのある雰囲気が醸し出されている。

 この日の演奏は、バイオリンとピアノが、主従なく対等にせめぎ合うとともに調和し、響きあった。曲調とシックなホールの内装の雰囲気がぴったり合い、まるで異次元の世界を作り出していた。 円熟のハーモニーとホールが作り出した響きと空間に、観客は「フランスの香り」を感じたことだろう。

フレデリック・ペラシー:12歳でフランスのクレテイユのコンセルバトワールを主席卒業。世界50カ国余りのオーケストラとソリストとして共演している。現在、パリのコンセルバトワールベルリオーズで教鞭をとる。
藤野ゆかり :大阪音楽大学卒業後、渡仏。フランス、ベルギー、ドイツ、イタリア、セネガル等で演奏活動を行っている。フレデリック・ペラシーとは1996年からデュオを組み、演奏会などをおこなっている。現在、イブリーコンセルバトワールで教鞭をとる。

(2017年4月4日、東広島芸術文化ホールくらら小ホール)(城所美智子)

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