kokkai


修道士は懺悔で知った秘密を決して口外してはならない。ロベルト・アンドー監督の『告解』は、バルト海に面した高級ホテル内での政治的な駆け引きに巻き込まれた修道士の言動を通じて、人間のあり方を描く。ほぼホテル内だけに限定して物語が展開する静かな会話劇である。

G8の財務相会議では、発展途上国の経済に大きな影響を及ぼす恐れのある重大な決定がなされようとしていた。その前夜、国際通貨基金のロシェ専務理事は、各国の財務相に加えて、有名なポップスター、絵本作家クレール・セス、修道士ロベルト・ホルスを招いて自分の誕生日祝いの夕食会を催す。夕食後、サルスはロシェから部屋に呼ばれ、懺悔がしたいと告げられる。懺悔の翌日、ロジェがビニール袋をかぶって死んでいるのが発見される。自殺なのか、他殺なのか。そしてG8の決定の行方はどうなるのか。各国の財務相の間で政治的な駆け引きが繰り広げられる。

前作の『ローマに消えた男』(イタリア映画祭上映時題名『自由に乾杯』)では、失踪した左翼野党の書記長と、彼の代役となる双子の兄弟を主人公に据えて政治の世界を描いたアンドー監督は、本作では、政治家と修道士という水と油のようなキャラクターを対比させることによって物語を進めていく。そのため、よりアイロニカルで観念的なタッチとなった。

全体的に動きが少なく、会話を中心に映画が進んでいく。イタリア映画にありがちな笑いの要素はなく、シリアスなトーンで一貫している。そのためか、若干テンポが緩く感じられる部分があるが、その分だけ真摯な眼差しで人間の良心の所在を問う姿勢を感じ取ることができる。


(2017年5月4日、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭2017)(矢澤利弘)