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最初はどうしようもない奴だと思っていたが、次第に愛おしくなってきた人間は、あなたのそばにはいないだろうか。クラウディオ・ジョバンネージ監督の『花咲く恋』は、未成年更生施設で知り合った男女の切ない恋のゆくえを描く。

携帯電話強盗で生活していた少女ダフネは警察に捕まり、未成年更生施設に送られる。そこは男女別棟で接触が禁止されているが、あるきっかけでダフネは入所者の青年ジョシュと愛し合うようになる。ある日、ダフネは父親の恋人の連れ子の献信式に出席するために許可を取って外泊する。だが、施設に戻らなければならない期限を過ぎてもダフネは帰らず、先に出所していたジョシュに会いに行く。

いわゆる不良少女と不良少年の恋愛であり、一般社会から疎外された者たちの物語である。一般人からすれば、とても共感できるようなキャラクターではないが、ジョバンネージ監督の視点は彼らを優しく包み込む。

主人公のふたりはプロの俳優ではなく、ダフネはローマのレストラン、ジョシュとはミラノの少年院で出会ったという。ダフネを演じたのはダフネ・スコッチャ、ジョシュを演じたのはジョシュア・アルジェリであり、映画の登場人物は彼らへの当て書き的要素が強いのではないだろうか。実にリアリティのあるキャラクターたちだ。

マイク・ニコルズ監督の『卒業』のラストシーンのように、清々しくも先行き不安なカップルの逃避行。今だけしか考えることのできない彼らの不器用な生き方が愛おしくなってくる。


(2017年5月5日、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭2017)(矢澤利弘)