shiawase


夢を描いたのだろうか。想像力が必要な映画である。アレッサンドロ・コモディン監督の『幸せな時はもうすぐやって来る』は、一貫したストーリーを把握するのが困難だ。ストーリーなど無いのかも知れない。だからといって、特段の映像美があるわけではない。過去と現在、現実と伝説がない混ぜになった脈絡のない不思議な作品である。

過去の時代だろうか。森の中、若者トンマーゾとアルトゥーロが走っている。ふたりは家を見つけ、森で暮らし始める。そうするうち、突然現れた男たちに撃たれて死ぬ。そのあと、映画の時制は急に現代になり、過去の伝説が語られる。

ストーリーをたどることは困難だが、本作の映像には「森(自然)」、「逃げる」、「閉じ込められる」といった記号が繰り返し表れる。また、過去、現在と、同じ役者が違う役で登場する。その解釈は見る者に委ねられる。


(2017年5月5日、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭2017)(矢澤利弘)