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世界的バイオリニストのロロンス・カヤレイによる日本初のリサイタルが5日、東京都新宿区のルーテル市ヶ谷ホールであった。

前半に演奏した曲は、シマノフスキの「バイオリン・ソナタ」、フォーレの「バイオリン・ソナタ第2番」。ロロンス・カヤレイは自身が執筆したプログラムノートで、この2曲を「隠れた名作」と紹介している。

「バイオリンのために書かれたレパートリーは(ピアノほどではないにせよ)膨大です。バロックから現代作品までの、私が常々演奏するようなよく知られた作品ばかりでなく、優れていながらまだそれほど広く知られていない作品を多くの聴衆に届けることも、演奏家としての私の役割だと信じています。まだ発掘されていない美しい宝石が埋もれているのです」

180センチ以上ある長身のカヤレイは、黒い衣装を身にまとい、全て暗譜で、バイオリンリサイタルで演奏される機会が少ない名曲をふくよかな音色で演奏した。

後半は、フランクの「バイオリン・ソナタ」。フランクの最高傑作と言われ、こちらはバイオリンリサイタルの定番曲だ。

「アーティストは、楽器同士の「心の交流」を創り出すために、音色における一貫性を際立たせることが必要です。こうして全体の雰囲気を大切にし、ハーモニーの構造の色彩感を尊重するのです。これは室内楽において非常に重要なステップであり、演奏者一人一人の個性があいまって、さらなる化学反応を起こすのです」

ピアノは菊地裕介。プログラムノートの通り、カヤレイのバイオリンと菊地のピアノは、会話しあうようにかけあいながら、美しいハーモニーを創り出していた。

アンコールの1曲目はフォーレの「夢のあとに」をしっとりと演奏した。続いて2曲目は、ガーシュイン作曲、ハイフェッツ編曲の「ポーギーとベス」より「そんなことはどうでもいいさ」で、これまでとは少し趣きが違いジャズ調で、楽しい雰囲気を会場に創り出し、リサイタルを締めくくった。

終演後のサイン会では、カヤレイは一人一人と英語でていねいに会話し、リサイタルに足を運んでくれたことへの感謝や、曲目について話をして、観客と積極的に交流していた。

ロロンス・カヤレイ:トーン・ハレ管弦楽団、RTHF交響楽団、ロシア国立交響楽団、ワシントン・ナショナル交響楽団、ラムルー管弦楽団、モントリオール交響楽団、クリーブランド管弦楽団、セントルイス交響楽団、バーゼル交響楽団、メキシコシティフィルなどのオーケストラと、またC.デュトワ、P.コーガン、M.プレトニョフ、G.ノヴァク、若杉弘、J.カレヴ、M.トゥルノフスキー、M.ヴェンツァゴ、L.スラトキン他多くの指揮者と共演。
使用楽器はカール.フレッシュの愛用した1742年製ピエトロ・グァルネリ。 

(2017年5月5日、東京都新宿区ルーテル市ヶ谷ホール)(城所美智子)