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人生も後半に差し掛かると、ただ友人たちと一緒に過ごした時間がとても懐かしいと感じることが誰にもあるはずだ。ジュゼッペ・ピッチョーニ監督の『かけがえのない数日』は人生の岐路に立つ若い4人の女性たちのほんの数日間のロードムービーである。

卒業論文を執筆中のリリアーナは指導教授に恋心を抱いている。カテリーナはリリアーナを愛しているらしい。バイオリニストのアンナは四重奏楽団に参加しようとする矢先、妊娠しているのが分かる。アンジェラは浮気性の恋人と別れられない。この4人がこの映画の主人公だ。カテリーナがセルビアのホテルで職を得て、ベオグラードに向かう車での旅に3人が同行する。だが、リリアーナは癌に侵されつつあった。

ゆったりとした時間の流れ。ゆったりとした音楽。4人はそれぞれ悩みを抱えながら今を生きている。そして、彼女たちを取り巻く人々。大きな事件が起きるわけではないごく普通の自動車旅をカメラは追う。だが、彼女たちにとっては、この一瞬が人生の岐路なのだ。彼女らにとってのかけがえのない数日間の物語である。


(2017年5月6日、有楽町朝日ホール、イタリア映画祭)(矢澤利弘)