
和太鼓の林英哲とパーカッションのシモーネ・ルビノが6日、音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017 」で共演した。
開演を告げる「一番太鼓」に続いて、林英哲の「三つ舞」を林が独奏。大太鼓の荘厳で歯切れ良いリズムは聴いている者を高揚させ、太鼓を力強く生き生きと打つ林の両腕は、筋肉隆々としていて美しい。
シモーネ・ルビノの独奏は3曲。ゲラシメスの「アスヴェンチュラス」では、スネア・ドラムのスティック同士を叩く演奏に始まり、まるで機械が叩いているかのような超高速の正確なリズムをスネア・ドラムで表現し、観客を圧倒した。カンジェロージの「バッド・タッチ」では、再生音源に合わせてパントマイムを行い、不思議な世界を作り出した。クセナキスの「ルボンB 」は、演奏不能と言われる難曲だが、ルビノの高度なテクニックで、難曲であるということを感じさせない余裕の演奏だった。
ルビノは2014年ミュンヘン国際コンクールで優勝し、ヨーロッパで活躍する音楽家。日本に来るのは今回が初めてだ。ルビノは子供の頃、ドラム・セットを始める以前から、林に憧れを抱き、林のような打楽器奏者になりたいと思っていた。
一方、林は、実家が広島の寺院。木魚などの打楽器は子供の頃から身近な存在だった。ビートルズのドラマーのリンゴ・スターに憧れて打楽器を始め、以後、太鼓のキャリアは46年になる。
「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017」のアーティスティック・ディレクターであるルネ・マルタンが林にルビノを紹介し、初めて2 人が共演したのは2017年2月。フランスで行われた音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」では、1日に 3回公演を行うというハードスケジュールであったが、好評を博した。
最後に、水野修孝の「交響的変容第3部「ビートリズムの変容」から鼓動」を2人で演奏した。林の和太鼓とルビノのティンパニの二重奏で、技と技がぶつかり合いつつ、東洋の楽器である和太鼓の音色と西洋の楽器であるティンパニの音色が融合していく。観客は総立ちで林とルビノを称えた。
林英哲:和太鼓。広島県生まれの太鼓奏者。1984年に初の太鼓ソリストとしてカーネギーホールにデビュー、国際的に高い評価を得た。和太鼓を世界に知らしめた第一人者。
シモーネ・ルビノ:パーカッション。2014年ミュンヘン国際コンクール優勝。2016 年ヤング・アーティスト・アワード受賞。2017年には、メータ指揮フィレンツェ五月音楽祭管と共演の予定。
(2017年5月 6日、東京国際フォーラム、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2017)(城所美智子)