広島県美術展はすでに69回の開催を数える。2013年に映像系種目を新設し、絵画系、写真系の作品規格の見直しを行うなどして、より多くの県民が参加しやすいように刷新された。2017年の広島県美術展(新県美展)は刷新後5回目にあたり、絵画系、彫塑系、工芸系、書系、写真系、デザイン系、映像系の7種目が公募され、合計1094点の応募があった。
ただ、鳴り物入りで始まった映像系種目だが、作品の応募数は開始以来低調だ。映像系の応募作品数と、入選作品数、入賞作品数の推移は次の通り。 入選数には入賞数を含む。
応募数 入選数 入賞数
2013年 第1回 15 7 4
2014年 第2回 27 13 5
2015年 第3回 18 10 4
2016年 第4回 16 9 4
2017年 第5回 12 6 2
第2回には27作品の応募があったが、年を追うごとに応募数、入選数ともに減少の一途をたどっている。他の種目では毎回出ている大賞は、第1回から今まで該当作品が一つもない。応募規程ではアニメーション作品に限定しておらず、ドラマやドキュメンタリーなどジャンルは問わないとされている。ただ、映像の長さは5分以内との決まりがあるため、実際のところ作品内容に幅を持たせることはできず、応募されてくるのはストーリー性が希薄なアニメーション作品が大半だ。
広島市では2年ごとにアニメーションの映画祭、広島国際アニメーションフェスティバルが開催されるなど、広島県はアニメーションと親和性のある地域であり、表現形態としてのアニメーションの重要性は強調するまでもない。ただ、一般的にアニメーションの制作には一定の技術が要求されるため、幅広い県民が制作できるわけではない。そのためか応募者も入選者も固定化されつつあるのが現状だ。
今回までの5回の実績を振り返り、次回の新県美展の映像系種目は、質、量ともに充実したものになることに期待したい。何らかのテコ入れも必要だろう。
(2017年6月24日、広島県立美術館)(重光英一)