広島県民からの公募による美術展である新県美展の映像系部門の応募作品の減少に歯止めがかからない。第5回新県美展は6月24日から広島県立美術館で始まったが、映像系部門の応募総数はわずか12点。入賞は2作品にとどまった。

広島県美術展はすでに69回の開催を数える。2013年に映像系種目を新設し、絵画系、写真系の作品規格の見直しを行うなどして、より多くの県民が参加しやすいように刷新された。2017年の広島県美術展(新県美展)は刷新後5回目にあたり、絵画系、彫塑系、工芸系、書系、写真系、デザイン系、映像系の7種目が公募され、合計1094点の応募があった。

ただ、鳴り物入りで始まった映像系種目だが、作品の応募数は開始以来低調だ。映像系の応募作品数と、入選作品数、入賞作品数の推移は次の通り。 入選数には入賞数を含む。

          応募数  入選数 入賞数
2013年 第1回    15    7    4
2014年 第2回    27     13    5
2015年 第3回    18     10    4
2016年 第4回    16    9    4
2017年 第5回    12    6    2

第2回には27作品の応募があったが、年を追うごとに応募数、入選数ともに減少の一途をたどっている。他の種目では毎回出ている大賞は、第1回から今まで該当作品が一つもない。応募規程ではアニメーション作品に限定しておらず、ドラマやドキュメンタリーなどジャンルは問わないとされている。ただ、映像の長さは5分以内との決まりがあるため、実際のところ作品内容に幅を持たせることはできず、応募されてくるのはストーリー性が希薄なアニメーション作品が大半だ。

広島市では2年ごとにアニメーションの映画祭、広島国際アニメーションフェスティバルが開催されるなど、広島県はアニメーションと親和性のある地域であり、表現形態としてのアニメーションの重要性は強調するまでもない。ただ、一般的にアニメーションの制作には一定の技術が要求されるため、幅広い県民が制作できるわけではない。そのためか応募者も入選者も固定化されつつあるのが現状だ。

今回までの5回の実績を振り返り、次回の新県美展の映像系種目は、質、量ともに充実したものになることに期待したい。何らかのテコ入れも必要だろう。

(2017年6月24日、広島県立美術館)(重光英一)