「ぴったりと息の合った演奏ですね」などと尋ねたら「あたりまえですよ」と言われそうだ。結成22年目となるマイ・ハート弦楽四重奏団のコンサートが8日、広島県広島市中区のひろしま美術館のホールであった。弦楽四重奏の魅力をテーマに、モーツァルト、シューベルト、グリーグによる弦楽四重奏曲など5曲を披露した。

今回のコンサートでは弦楽四重奏曲を年代順に並べて演奏。1曲目のモーツァルトの「狩」は、メンバーの長い活動歴からくる円熟味を感じさせる力強い演奏だった。続くシューベルトの「死と乙女」もバイオリン、ビオラ、チェロの音の絡み合いが見事だ。圧巻だったのはグリーグの弦楽四重奏曲ト短調作品27。第1楽章から第4楽章までをしなやかに披露した。4曲目は山田耕筰の「赤とんぼ」。各パートの繊細な演奏に観客たちは酔いしれた。

「この曲が発売されたのは1965年8月6日。ちょうど広島原爆投下の20年後です」とビオラ奏者で代表の沖田孝司さんが説明し、アンコール曲として演奏したのはビートルズの名曲「イエスタデイ」。しっとりとした余韻を残して約1時間のコンサートは幕を閉じた。

マイ・ハート四重奏団はビオラ奏者の沖田孝司さんが中心となって結成され、1995年からひとりひとりの心をつなごうという「マイ・ハート・コンサート」を開始、広島を本拠地に精力的な活動を続けている。メンバーは、辻井淳(ファーストバイオリン)、釋伸司(セカンドバイオリン)、沖田孝司(ビオラ)、雨田一孝(チェロ)。

マイ・ハート弦楽四重奏団は、9月12日に広島県民文化センター(広島)、14日は京都府立府民ホール「アルティ」(京都)、15日はティアラこうとう小ホール(東京)でコンサートを開く。

(2017年7月8日午後2時、ひろしま美術館)(矢澤利弘)