コンサートホール内に緊急地震速報が流れ、観客は一人残らずコンサート会場の外へ避難した。陸上自衛隊第13音楽隊が 15日、広島県東広島市の東広島芸術文化ホールくららで「防災コンサート」を行なった。

防災コンサートとは、演奏会の最中に大地震が起きたという想定のもと、観客が参加して避難訓練を行なうもの。観客は、コンサートの途中で避難訓練があることはあらかじめ知らされているが、どのタイミングでどのように訓練が行なわれるのかという詳しい事前説明はあえて行なわれない。

 

第1部は吹奏楽の人気曲が中心のプログラム。A.リードの「音楽祭のプレリュード」で華やかに始まり、平成 29年度の吹奏楽コンクールの課題曲である木内涼の「シャイニング・ロード」は明るいマーチだ。J.ヴァンデルローストの「カンタベリーコラール」は賛美歌らしい荘厳な雰囲気。菅野よう子の NHK大河ドラマ「おんな城主、直虎」のテーマ曲に続いて、E.エルガーの「威風堂々第1番」が輝かしい雰囲気でフィナーレを迎えた。


その直後、会場内に緊急地震速報が流れた。音楽隊の隊員達は楽器を床に置き、椅子の下に頭を隠した。観客は座ったままで頭を低くしたり、両腕で頭を覆ったりした。そして、大音量の「ゴーーー」という地震を表現した音が流された。


筆者は東日本大震災の時に東京で震度5強の揺れを体験したが、その時のことが思い出され、訓練とわかっていても体が硬直するようだった。その後、火災が発生したという想定で、会場係員の誘導に従って、観客は全員ホールを出て、通路やロビーまで避難した。



訓練終了のナレーションを館内放送で行なう予定のようだったが、館内放送設備が作動せず、観客はしばらくの間、避難先で待つことになった。結局は拡声器で避難訓練終了の告知が行なわれた。安芸灘沖3.7キロ、マグニチュード7、震度6弱の地震が起こったという想定の訓練だった。

 

第2部は、ポップスステージ。「TV&シネマ・ヒッツ」「女流演歌コレクション」「J−BEST2016 ベストヒッツ」「美空ひばりメドレー」を演奏し、音楽だけでなく、ダンスでも観客を楽しませた。Z.アブレウの「ティコティコ」はラテンの軽快なリズムが心地よい。G. ハルの「チューバ吹きの休日」はチューバのソロ、カーペンターズの「青春の輝き」はアルトサックスのソロで各隊員の歌心あふれる演奏が披露された。

 

アンコールは全国高等学校野球選手権大会の歌「栄冠は君に輝く」。地元の西条農業高校が今日の予選大会で逆転勝利したことが伝えられると会場は湧いた。最後は「それ行けカープ」を隊員と観客が熱唱し、コンサートは終了した。

 

2017年7月15 日。東広島市、東広島芸術文化ホールくらら)(城所美智子)