妻を亡くしたばかりのヒェーテルは、妻が生きていた頃に迎えた養子のダニエルが一向に懐いてくれず手を焼いていた。そこで、ダニエルの実母を探すため、2人はコロンビアへ向かう。アーリル・アンドレーセン監督のノルウェー映画『愛せない息子』は、血の繋がらない父と子の心の旅路を描く。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭では17日、この映画が長編コンペティション部門のノミネート作品として上映され、脚本のヒルデ・スサン・ヤークトネスさんによる質疑応答が行われた。

この映画は現実感が高く、実話の映画化、あるいは実際のエピソードに触発された物語のように思えてくる。実際、客席からもそのような質問があった。だが、この映画はまったくのオリジナルだ。あるホテルで経理をしていたホルヘ・カルマチオがある日、この映画の原案となるアイデアを考えた。ホルヘはノルウェー人と結婚しており、2人の実子がいる。日本では養子縁組が広く行われているとは言えないが、ノルウェーでは珍しくない。ホルヘは映画原案のコンテストで優勝し、プロデューサーが付いた。ホルヘは脚本家ではないため、プロデューサーから脚本家のヒルデ・スサン・ヤークトネスさんに依頼が来た。特にコロンビアについてはリサーチを進め、監督も数シーンを書き換えて脚本が完成した。

父親に懐かない少年役がこの映画のキモだ。少年役をキャスティングするために時間がかかったが、最終的にはフェイスブックで役にぴったりの少年を見つけた。彼はコロンビア人の親を持ち、ノルウェー語も話せる。ただ、問題は父親役のクリストッフェル・ヨーネルとなまりが微妙にずれていることだった。そこで少年のなまりは育ての母親ゆずりだという設定にした。脚本執筆には数年かかった。監督がコロンビアに行って調べた成果も盛り込んだ。

(写真:脚本のヒルデ・スサン・ヤークトネスさん)


(2017年7月17日午後2時、埼玉県川口市、SKIPシティ映像ホール)(矢澤利弘)
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