SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017では16日、VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)やAR(アーギュメンテッドリアリティー、拡張現実)に関するセミナー「AR・VRの最新動向とビジネス展開」があった。諏訪東京理科大学の三代沢正教授がAR・VRの基礎知識を中心に、市場動向などを解説した。

ARの最近の例としては、2016年7月にリリースされたスマートフォンアプリの「ポケモンGO」が挙げられる。このアプリの累計ダウンロードは7億5000万に達している。また、VRには、2016年10月に発売された「プレイステーションVR」などのエンターテインメントの事例、MR(ミックスドリアリティ、複合現実)には、JALの社員教育やボルボの組み立て工程での利用などが事例としてあげられる。

ARは現実環境がベースにあり、そこにコンピューターグラフィックス映像や文字情報を付加したものであるのに対し、VRはコンピューターグラフィックス映像や音響などを活用して、人工的な現実感を創り出したものという違いがある。ARはVRの発展形として位置づけられており、ARを実現するための基盤技術の多くはVR技術と共通しているため、それらを利用することができる。「技術の進み方を見ると、まず最初はVRから進みました。VRからの技術の派生のような形でARになり、そして今はMRに進化しています。VRは現実に存在しない仮想物をあたかも存在するように体験させるような技術で、ARは目の前の現実に対してコンピューターで作られた画像やCGなどを重なるイメージです。MRはそれをもっと進めて、現実の中にいろいろな仮想空間を高度に融合したもの。ARをより高度化したものと思っていただけたらいいかと思います」

VRの歴史は、1968年にアイバン・サザランド博士らが開発した世界初のヘッド・マウンテッド・ディスプレイにさかのぼる。これは頭上から線でつながっていることから、ダモクレスの剣と呼ばれていた。後年、同博士はエバンスサザランド社を設立し、その後の業界に多大な功績を残している。

日本国内では、2007年にNHK教育テレビで放映した「電脳コイル」によって、ARの概念が知られるようになり、現実世界に拡張された情報を付加する意味が理解されるようになった。位置型ARの応用事例としては、「ポケモンGO」が有名だろう。Niantic AWE2017における発表では、2017年1月時点で、ポケモンGOは6億5000万ダウンロード、月間アクティブユーザーは6500万にのぼり、ユーザーが移動した距離の総計は90億キロメートルに及ぶ。

調査会社IDCジャパンのデータによると、世界のAR/VR関連市場は2020年には2017年の10倍以上、特に小売業や製造業といったビジネス領域では15倍に拡大する見通しだ。多くの利用分野で年間平均成長率が100%を超えると予測されている。日本ではエンターテインメント市場での利用が目立つが、世界市場では製造業などのビジネス領域での活用が進んでいる状況だ。世界的には、2017年度の市場規模は139億ドルだが、2020年には1433億ドルになるという予測になっている。

近年は、フェイスブックが2014年にOculusを買収、また、マイクロソフトはHoloLensを導入、グーグルがVR Platform Daydreamを発表するなど、デジタル業界の動きが激しい。2015年にハーバード・ビジネスレビュー誌に掲載されたマイケル・ポーターの論文『IoT時代の競争戦略』ではARの産業分野での有用性が紹介された。この論文は、接続機能を持つスマート製品が多くの業界、特に製造業における競争戦略にどのような変革をもたらしているのかを論じている。また、論文『IoT時代の製造業』では、ARを用いた製品の設計や監視、操作修理メンテナンス、サービス、サポートを行う有効性を論じている。

今後、AR・VRは、どうなっていくのだろうか、三代沢教授は、議論している段階であるとしつつ、次のように予測している。まず、視聴覚から五感情報に拡張していく。視聴覚の次は触覚、嗅覚などへと広がっていく。特に触覚は実用化が近いという。VR、AR、MRという形の流れになっているが、次は人の機能を拡張するAH(アーギュメンテッド・ヒューマン、拡張人間)という流れになっていくのではないかという。また、IoTとの連携が進み、AI(人工知能)機能が内蔵される。そうして、市場規模はスマートフォン以上になるという。

「我々も開発をしていますが、意外に敷居が低い。いろいろなことが自分たちでやれる環境ですので、ぜひそういうお気持ちのある方は参加して欲しい。コンテンツやパッケージ、ハード、テクノロジーといった世界がありますので、様々な階層でやってみればいいと思います。ぜひみなさんと一緒に進められたらと思います」と三代沢教授はセミナーを締めくくった。


(2017年7月16日午後2時、埼玉県川口市、SKIPシティHDスタジオ)(矢澤利弘)