広島で写真作家として活動する藤岡亜弥さん(写真左)による写真集「川はゆく」の発売記念トークライブが22日、広島市南区のエディオン蔦屋家電イベントルームであった。出版社の赤々社代表・編集者の姫野希美さん(写真右)と写真集にかける思いや制作過程などを対談した。


藤岡さんは今までに3冊の写真集を出している。2004年の『さよならを教えて』は、20 代の頃の作品。ヨーロッパを1年に渡って放浪したときに撮った写真がベースになっている。「よく分からないけど、次のところを探したいから旅をした。日本に帰ってきて1枚1枚見ていたら色々なことが思い出された」。当時はガールズフォトが注目されていたが、「ガールズフォトから抜け出したくて文章を一緒に付けたいと思った」。


30代で出したのが2009年の写真集『私は眠らない』。「呉に帰省するたびに撮りためたものをまとめた。初めてじゃないのに、初めての場所じゃないかと思える場所がある。そんなズレる気持ちを表現した」という。


8年振りの『川はゆく』は7月に刊行されたばかりだ。「自分が広島に住むと思っていなかったが、広島に住むことになり、カタカナのヒロシマを意識せざるを得なくなった。プレッシャーで一旦写真を撮れなくなり、テーマに押しつぶされそうにもなった」。そこで藤岡さんは日常を撮りながら学んでいくしかないと考えた。そう思ったら気が楽になったという。藤岡さんは広島県生まれ。平和教育は受けていたものの、「広島のことをよく知っているかというと、よく知らなかった。広島のことを考えたことがあるのだろうか」と自問自答した。広島平和記念資料館(原爆資料館)へも何度も通った。「記憶が記録されることで新たな記憶になる」と藤岡さん。


新しい写真集のタイトルは『川はゆく』。広島に住んでから川の存在の大きさを知ったという。広島の川は毎日向きや流れが変わる。前2作とは違い、「変にセンチメンタルなタイトルにはしたくなかった」。前2作から変わったことは、この写真集からフィルムではなく、デジタルカメラで撮影したこと。そして、最初から広島を撮るというテーマがあったことだ。前の2冊はテーマがなかったという。デジタルカメラに変えたことによって、これまでは1枚だけだったものが 10枚撮れるようになった。「たくさん撮ることによって、撮り損ないのようなものも拾えるようになった。撮ったからこそ見えてくるものがある。その面白さに気がついた」。


フランスのアラン・レネ監督の映画に『ヒロシマ・モナムール』(公開時タイトル:二十四時間の情事)という作品がある。藤岡さんは、この映画のような写真集を作りたかったと打ち明ける。「一編の映画を見るような自由な写真集にしたかった」。


この写真集には、2013年から2017 年の春までに撮った写真を収録している。「これを問うことが私の責任でもある」との決意を示し、藤岡さんはトークライブを締めくくった。


エディオン蔦屋家電では写真展も31日まで開催中



(2017年7月22日午後2時、エディオン蔦屋家電2階イベントルーム)(矢澤利弘)


川はゆく
藤岡亜弥
赤々舎
2017-07-16