
7月15日から23日まで埼玉県川口市のSKIPシティで開催されていたデジタル映画に特化した映画祭「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2017」の観客賞が3日、発表された。観客賞は来場した観客の投票で決まる賞で、長編部門は加藤悦生監督の『三尺魂』、短編部門はゴリ監督の『born、bone、墓音。』、アニメーション部門は今林由佳監督の『ももちゃんのねこ』が受賞した。
長編部門の『三尺魂』(トップの写真)は、巨大な花火を使った集団自殺のため集まった4人の男女の人間模様を描いた作品で、すでに「SKIPシティアワード」も受賞している。加藤悦生監督は今回の受賞に対し、「僕らが映画を創るうえで心に留めているのは、『誰のための映画なのか』です。楽しければいい、笑えればいい、というのでは制作者の利己的映画になってしまいます。『三尺魂』は観ていただく誰かのために、スタッフ全員が慎重に丁寧に創った作品です。このような賞をいただき、評価をいただけたことは、僕らの思いが観ていただいた皆さんに伝わったのだと実感できますので喜びもひとしおです。ありがとうございました」とコメントした。

『born、bone、墓音。』
短編部門の『born、bone、墓音。』は、骨を洗う儀式を通じて、家族の絆を軽妙に描くハートフルコメディ。ゴリ監督は「粟国島の風習が取らせ手くれた賞だと思います。僕自身もこの映画を撮るまで洗骨の存在は知りませんでした。祖先を丁寧に見送る風習は神秘に満ちています。島のおばあちゃんたちが伝えてくれた詳しい洗骨の話も脚本を充実させましたし、島の若者たちの無償の協力も現場を活気付かせました。短期間の撮影で、焦りの気持ちが出て来た時も、現場のスタッフが明るく作業する事で気持ちも楽になり、役者陣も楽しそうに演じてくれたので、クランクアップは清々しいものでした。みんなの気持ちと島の歴史が詰まった作品を観て喜んで頂けた事が何よりのご褒美です」とコメントしている。

『ももちゃんのねこ』
また、アニメーション部門の『ももちゃんのねこ』は、猫と出会った少女の成長を柔らかいタッチで描いた作品。今林由佳監督のコメントは次の通りだ。「観客賞大変嬉しいです! 『ももちゃんのねこ』は、「親子が『生命』というテーマについて語り合うきっかけになるような映像が作りたい」という想いから生まれた作品なので、お子さんたちも多く来場される本映画祭にて上映され、多くの方に観ていただけたこと非常に嬉しく感謝しております。ほかのノミネート作品からも、多くの刺激を受けましたし、この経験を糧に次の作品づくりに励みたいと思います。最後に、このアニメーションを実現させていただいた、プロデューサーの菊池さん、原案・監修のわだことみ先生に感謝申し上げます」。
観客賞の受賞作品には主催者賞として賞状の授与、副賞として埼玉県産品が贈られる。
(2017年8月3日)(矢澤利弘)