絵本作家林明子の原画や資料を展示する巡回展「絵本のひきだし 林明子原画展」が27日まで、ひろしま美術館(広島県広島市中区)で開催されている。代表作「はじめてのおつかい」「こんとあき」から最新作「ひよこさん」までの絵本原画のほか、イラストレーター時代の作品や角野栄子作の「魔女の宅急便」に添えた挿絵など、約200点を展示している。

展示は全6章で構成。まず「1章 若きイラストレーターとして」では、1971年から1975年にかけて雑誌のイラストを担当した時の原画を展示し、林の仕事の出発点を紹介する。「2章 はじめてのおつかい」では、筒井頼子とのコンビによる絵本「はじめてのおつかい」から「あさえと ちいさいいもうと」「おでかけのまえに」「おいていかないで」「いもうとのにゅういん」「とん ことり」の5冊の原画を時系列に展示し、幼い少女の繊細な心を描く林の真骨頂を紹介。「3章 ふくらむ作品世界」では、少女を主人公にした作品だけでなく、さらにバラエティに富む作品の数々を展示した。「4章 林明子のものがたり」では、林が絵のみならず、物語を手掛けた作品を並べている。「5章 さまざまな技法で」では、黒色インクだけで描いた挿絵やポスターカラーを使った作品、色紙をコラージュした作品など、林の技法の幅広さを示す。最後の「6章 ひよこさん」では、最新作「ひよこさん」の原画とラフスケッチを展示している。

展示の最初と最後には写真撮影コーナーを設けており、観覧者は絵本の世界に入っていくような体験をすることができる。

絵本のように牛乳パックを持って写真撮影できる


展示の最後には、イスに座って実際の絵本を読むことができるコーナーも設けられている。観覧者はゆっくりと林の描く暖かで懐かしい世界を楽しめるはずだ。


(2017年8月12日、ひろしま美術館)(矢澤利弘)