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広島交響楽団によるアフタヌーン・コンサートが5日、東広島芸術文化ホールくららであった。指揮は飯森範親、ピアノは広島出身で2010年にジュネーブ国際コンクールで優勝した萩原麻未。モーツァルトの歌劇「フィガロの結婚」より序曲、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を演奏した。

コンサートの冒頭で、指揮者の飯森から演奏曲に関する思いや聴きどころについて紹介があった。飯森は、会場のくららについて、素晴らしい響き、そしてオペラハウスのような造りで雰囲気がよい、と絶賛。「フィガロの結婚」では、どんでん返しのオペラのストーリーの楽しさを伝えたい、と抱負を語った。

チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」は、飯森がピアノを始めたきっかけの曲。3歳の頃、第1楽章の冒頭の和音の響きに衝撃を受けピアノを始め、その後、指揮者になったという。萩原麻未のダイナミックで美しい音色に酔いしれて欲しいとこの曲への思い入れの強さをうかがわせた。

ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」は、ベートーヴェンが30代の半ばの頃、交響曲第5番、「運命」と同時並行で作曲した。当時ベートーヴェンはすでに耳が聴こえなくなっていたと考えられており、「運命」は自身の過酷な運命に立ち向かうような強い曲調となっている。一方、「田園」は、ベートーヴェンが暮らしていたウィーン郊外のハイリゲンシュタットの小道を散歩をしながら、聴覚以外の感覚を研ぎ澄まして感じたであろう光や自然の景色を表現しており、「運命」とは対照的である。このような背景があったことを演奏から感じて欲しい、と飯森は語った。

会場のくららは音楽専用のホールであるためか、広島交響楽団の演奏は、広島市内のホールで聴くより格段に響きがよく、まとまりが感じられた。萩原のピアノとの共演では、萩原のダイナミックな演奏にオーケストラが負けていない感じがあり、素晴らしい演奏だった。

アンコールは、ピアノソロの演奏で、グノーの「アヴェ・マリア」、オーケストラの演奏で、モーツァルトが14歳で作曲したという「交響曲第9番から第4楽章」の2曲。地元のホールで、広島出身の世界的ピアニストや広島交響楽団の演奏を聴けることの幸せを感じた観客も多かっただろう。観客からは大きな惜しみない拍手が送られた。


(2017年11月5日、東広島芸術文化ホールくらら)(城所美智子)