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試合で活躍すれば、難民はクズじゃないことを示すことができる。カリン・アヴ・クリントベルグとアンデシュ・ヘルゲソン監督の『ナイス・ピープル』は、内戦下のソマリアから逃れてスウェーデンの片田舎ボーレンゲで暮らす難民たちが伝統的な氷上スポーツ「バンディ」に挑む姿を追ったドキュメンタリーである。

ある地元の事業家がソマリア人チームの結成を思いつき、メンバーたちは8カ月後の世界選手権を目指す。熱帯地域出身のチームが氷上スポーツに挑むという物語といえば、ジャマイカのボブスレーチームが冬季オリンピックに初出場した実話を基に制作された『クール・ランニング』という映画を思い出さずにはいられない。この映画はその難民版といえるかもしれないが、チームメンバーの苛酷な体験をあぶり出しながら、世界選手権までの関係者の姿をドキュメンタリーで描いていく本作は、よりシリアスである。

チームのスポンサーからの厳しい意見、チームメンバーの入れ替えなど、様々な出来事を乗り越えて、いよいよ試合当日を迎える。対ウクライナ戦、対日本戦、対モンゴル戦と続く。さすがに強豪ぞろいだ。ソマリアチームは一勝はおろか1点すらあげることもできない。屈辱的な試合展開だ。そして、対ドイツ戦。やはり勝つことはできなかった。だが、1点をもぎ取ることはできた。ソマリアチームにとってはそれだけでも最大の喜びなのだ。

難民は第三国に定住することができたとしても、依然、地元の住民とは融和することが難しい。だが、スポーツの力で両者が少しでも打ち解け合うことができたら。そんな希望を見出すことができそうな作品だ。


(2017年11月11日午後2時、広島原爆資料館ホール、難民映画祭)(矢澤利弘)

写真:(c)Thelma/Louise