バイオリン界のレジェンド、ギドン・クレーメルが広島にやってきた。広島市の広島文化学園HBGホールで12日、広島交響楽団の「平和の夕べ」コンサートがあった。
バイオリンは、世界のトップ・バイオリニストの1人と言われるギドン・クレーメル。ピアノはフランスの28歳、若手実力派リュカ・ドュバルグ。バルト三国出身の若手演奏家23名からなる室内合奏団クレメラータ・バルティカが共演した。指揮は元NHK交響楽団コンサート・マスターの徳永二男。
ベートーベンの「弦楽四重奏第11番セリオーソ」をクレメラータ・バルティカが演奏し、コンサートの幕が開いた。世界最高峰の室内アンサンブルと評される通り、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスが作り出す重層的で美しいハーモニーがホールに響く。
クレメラータ・バルティカは、クレーメルが1997年に創設した合奏団であり、メンバーは、バルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)出身者からなる。クレーメル自身もラトビア出身だ。2018年はバルト3国のロシアからの独立100周年を祝う記念の年であり、クレーメルとクレメラータ・バルティカは、「バルト3国祝独立100周年文化大使」として活動している。
2曲目は、管弦楽はクレメラータ・バルティカと広島交響楽団、ピアノはリュカ・ドュバルグで、ベートーベンの「ピアノ協奏曲第2番」を演奏した。ドュバルグは身長180センチを超えるように見える長身で細身のスーツを着こなし、黒縁眼鏡が印象的だった。繊細なタッチで管弦楽とも息もぴったりに熱演した。アンコールのピアノソロは、エリック・サティの「グリシェンヌ第1番」で、アンニュイな雰囲気を見事に表現した。
3曲目は、シューマンの「バイオリン協奏曲」。管弦楽はクレメラータ・バルティカと広島交響楽団、バイオリンはギドン・クレーメル。70歳のクレーメルは、ふわっとした白いシャツで登場。巨匠の音を聞き漏らすまいとするように、観客がクレーメルの作り出す音色に集中するような雰囲気が会場に生まれていた。クレーメルは1641年製の「ニコラ・アマティ」を使用。400年以上前に作られたバイオリンから奏でられる音は、優しく、特に2つ以上の音を同時に弾く「重音」の美しさは際立っていた。
アンコールはクレーメルのソロで、ワインベルク作曲、ギドン・クレーメル編曲の「チェロのための24の前奏曲より第21、第22」。バイオリンの弓使いは、短く素早く飛ばすように動かす「スピッカート」という手法を多用し、どこかの国の民族音楽のような曲調で、独特の不思議な世界観を表現した。
(2018年2月12日、広島市広島文化学園HBGホール)(城所美智子)