
指揮者なしでの交響曲の演奏。メンバー33人は全員男性、オールブラックのいかつい服装だ。
「篠崎史紀の3大交響曲演奏会、マロオケ2018船橋公演」が28日、千葉県の船橋市民文化ホールであった。
マロオケの正式名称はドイツ語で「Meister Art Romantiker Orchester」(マイスター・アールト・ロマンティカー・オルケスタ―)、で頭文字を並べてMARO。マロオケのコンサートマスターである、NHK交響楽団第一コンサートマスター篠崎史紀の愛称「マロ」にもかけている。メンバーはマロさんを中心に、国内主要オーケストラのコンサートマスター、首席奏者などからなる。2009年に北九州国際音楽祭でデビューし、以来、年に1回のペースで公演を重ね、2016年には東京サントリーホールで満場を魅了した。
プログラムは、モーツァルトの交響曲第35番「ハフナー」、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」、ベートーベンの交響曲第7番、アンコールはベートーベンの交響曲第1番第4楽章。
どの曲も素晴らしい演奏だったが、特にベートーベンの交響曲第7番は、弦楽器が体全体を動かして演奏し、音楽のキャッチポールをしているようにも見え、観客は目で見て、耳で聴いて、演奏を楽しむことができた。
第1バイオリンと第2バイオリンが向かい合う配置になっており、お互いに体の動きや楽器の動きでパスを出し合い、時には競い合うように自由に演奏する様子は、指揮者がいないからこそできるのかもしれない。
バイオリンは、国内主要オーケストラのコンサートマスター7名がメンバーに入っている。マロさんの座席はコンサートマスターの定位置だが、その他のメンバーは曲によって座席が入れ替わる。筆者の地元で演奏を聴く機会の多い広島交響楽団のコンサートマスターの佐久間さんはどこだ?奥のほうの一番後ろか、もうちょっと目立ってほしい、読売交響楽団コンサートマスターの長原さんは、マロさんの隣で笑いながら一番楽しそうに弾いてるように見える、など、所属オーケストラではいつも定位置に座っているコンサートマスターたちが、メンバーの一人として演奏している姿を探して、観察するという楽しみ方もマロオケならではだ。
演奏が終わり、ブラックスーツの男性33名が舞台の前で一列にそろった姿はマフィア映画さながらで迫力がある。満席の会場から大きな歓声と拍手が送られた。
マロオケ2018メンバー
バイオリン
篠崎史紀(N響第一コンサートマスター)、伊藤亮太郎(N響コンサートマスター)、双紙正哉(東京交響楽団第2バイオリン首席)、伝田正秀(読売交響楽団アシスタントコンサートマスター)、西江辰郎(新日本フィルコンサートマスター)、白井篤(N響第2バイオリン次席)、崎谷直人(神奈川フィルコンサートマスター)、佐久間聡一(広島交響楽団コンサートマスター)、長原幸太(読売日本交響楽団コンサートマスター)、戸澤哲夫(東京シティフィルコンサートマスター)
ビオラ
佐々木亮(N響首席代行)、中村翔太郎(N響次席)、鈴木学(東京都交響楽団ソロ・ビオラ奏者)、横溝耕一(N響バイオリン奏者)
チェロ
桑田歩(N響首席代行)、篠崎由紀(篠崎ミュージックアカデミー代表)、富岡廉太郎(読売日本交響楽団首席奏者)、伊藤文嗣 (東京交響楽団首席奏者)
コントラバス
西山真二(N響首席代行)、菅沼希望(新日本フィル奏者)
フルート
甲斐雅之(N響首席)、中村淳二(N響奏者)
オーボエ
岡北斗(藝大フィル奏者)、浦丈彦(読売日本交響楽団オーボエ奏者)
クラリネット
松本健司(N響首席)、芳賀史徳(読売日本交響楽団クラリネット奏者)
ファゴット
岡本正之(東京都交響楽団首席)、鈴木一成(神奈川フィル首席)
ホルン
日高剛(東京芸術大学准教授)、勝俣泰(N響奏者)
トランペット
菊本和昭(N響首席)、多田将太郎(第8回東京音楽コンクール金管部門第1位)
ティンパニ
岡田全弘(読売日本交響楽団首席)
(2018年4月28日、千葉県船橋市民文化ホール)(城所美智子)(本記事の見解部分は筆者の個人的見解です。本サイトを代表するものではありません。)