
バイオリンの川久保賜紀をソリストに迎え、指揮・川瀬賢太郎、管弦楽・東京フィルハーモニー交響楽団によるコンサート「スーパーソロイスツ」が30日、東京都渋谷区のオーチャードホールであった。
プログラムは、チャイコフスキーの「アンダンテ・カンタービレ」、プロコフィエフの「バイオリン協奏曲第1番」、チャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」。2つのバイオリン協奏曲は、2002年にチャイコフスキー国際コンクールの最高位を獲得し、世界的バイオリニストとして活躍している川久保賜紀がソロをつとめた。
一般的なクラシックコンサートでは、オーケストラがソリストを迎えて協奏曲(コンチェルト)を演奏するときには、プログラムの前半か後半のいずれかでコンチェルト1曲を共演することが多い。
だが、「スーパーソロイスツ」のコンセプトは「前半もコンチェルト、後半もコンチェルト」であり、川久保はプロコフィエフの「バイオリン協奏曲第1番」とチャイコフスキーの「バイオリン協奏曲」という大曲を2曲演奏した。
「スーパーソロイスツ」のもう一つの特徴は、生演奏の様子をステージ上の大型スクリーンに映し出すことだ。観客はテレビのようにソリストの演奏をアップで見ることができる。大型スクリーンには、バイオリンの指板の上を自由自在に動き回る川久保の左手の動きがたびたびアップで映し出された。そのため、観客は、指揮者とオーケストラとソリストの動きを俯瞰しつつ、超人的な速さで4本の弦の上を前後左右に躍動するソリストの指の動きをスクリーンを通して観察しながら、ハーモニーや超絶技巧を聴くという多面的な楽しみ方ができた。
指揮者の川瀬賢太郎は、全身を伸びやかに大きく使って曲を表現をしていることがわかる。時折、スクリーンにその表情が映し出されることで、生演奏中の指揮者の向こう側を見ることができるのは、新鮮だった。
終演後は、川久保賜紀のサイン会が行われた。バイオリンは、あご、首、鎖骨のあたりで楽器を支えて演奏する。近くで見ると、バイオリンが川久保の体に接触していた部分が大きく赤く腫れあがっているように見えた。コンチェルト2曲の演奏がいかにハードだったかということを表しているようだった。
(2018年4月30日、東京都渋谷区オーチャードホール)(城所美智子)