クレーンで海上に吊るした巨大スクリーンで映画を上映する「うみぞら映画祭2018」が2018年5月19日から20日まで淡路島の大浜海水浴場(兵庫県洲本市)一帯であった。映画祭は今年で3回目。ディズニーアニメ『リメンバー・ミー』や『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』などの人気作や淡路島でロケ撮影された映画などを4カ所で上映し、会場は淡路島内外からの多くの観客で賑わった。
映画祭では、メーンとなる大浜海水浴場(海の映画館)のほか、1013年に定期上映館としての映画館営業を終了し、現在は貸しホールとなっている「洲本オリオン」(レトロ映画館)と旧紡績工場のレンガ倉庫跡地「すもとアルファビアミュージアム」(レンガ映画館)、市の複合施設「洲本市文化体育館」(ホール映画館)の4カ所で映画が上映された。
洲本オリオンでは、映画祭の主宰者でもある大継康高監督の『あったまら銭湯』のほか、13日に開催された淡路島短編映画祭の優秀作品の再上映や淡路島の観光プロモーション映像などを無料上映、19日には『あったまら銭湯』に出演した女優の中尾萌那さんが舞台挨拶した。
洲本オリオンは洲本市の観光名所の一つであるレトロこみちにあり、映画館に訪れた観客は必然的にこの地域の魅力に触れることになる。
レトロこみちの案内板
すもとアルファビアミュージアムでは、淡路市の淡路夢舞台が亜人研究所のロケ地として使用された本広克行監督の『亜人』を上映した。会場の収容人員の関係から、1日150人限定での上映だったため、上映開始前には整理券を求める人々で長い列ができた。
整理券を求める人々の列
すもとアルファビアミュージアムの外観
この会場は映画上映用の施設ではないため、パイプ椅子を並べて75席が作られた。当初はもっと多くの席を作ろうとしたが、会場内には柱があるため、全ての席で問題なく映画鑑賞ができるように席数を限定したという。
洲本市文化体育館では、19日には淡路市、洲本市、南あわじ市の島内全ての市でロケ撮影が行われた篠原哲雄監督の『種まく旅人 くにうみの郷』、20日には淡路市の棚田と古民家でロケ撮影された落合賢監督の『太秦ライムライト』を上映した。

洲本市文化体育館の外観
洲本オリオン、すもとアルファビアミュージアム、洲本市文化体育館での上映はいずれも午後6時頃には終了し、メーンイベントである大浜海水浴場での水上スクリーンを使った映画上映に移ることになる。
なお、4つの会場を全て回るとクリアファイルをプレゼントするという企画も行われた。
大浜海水浴場での映画上映は午後7時からだが、それに先立ち、会場の周辺ではさまざまなイベントが行われた。
正午過ぎからは「淡路島グルメブース」として、洲本飲食組合を中心に淡路島グルメを楽しむことができる飲食ブースが出店した。
淡路ビーフを使ったグルメブース
また、淡路島の産業であるお香、吹き戻しや、インテリアにもなる植物標本(ハーバリウム)などの制作を体験できるワークショップエリアを開設し、淡路島のさまざまな魅力を発信する工夫がされていた。

吹き戻しの制作ワークショップ
浜辺に設けられたステージでは、淡路島のベテランバンドや学生バンドなどが出演した「うみぞら音楽祭2018」があった。
いよいよ午後7時。ゲストの久松郁実さん、泉はるさんの2人からインスタデザインコンテストの最優秀作品発表が発表された後、映画『リメンバー・ミー』の上映が始まった。

いよいよ映画の上映が始まる
波音を背景に、潮風に吹かれながら、観客たちは海辺に浮かぶ巨大なスクリーンで映画を堪能していた。
映画上映終了後のゲート付近
『リメンバー・ミー』の上映の後は、引き続き午後9時から『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』の上映が始まる。会場は入れ替え制のため、ゲート付近は慌ただしいようすだ。
夕刻からは、毎月第4日曜日に淡路島の各地で開催しているSodatete Marketが開催された。島の食材にこだわる料理人や手作りアーティストが集まって自慢の料理や手作り商品を出展した。
午後11時半過ぎに『パイレーツ・オブ・カリビアン』の上映が終わり、2日間にわたって開催されたうみぞら映画祭は閉幕した。
うみぞら映画祭は今回で3回目。2017年5月に開催された前回の映画祭の来場者数は約5000人だった。昨年に比べて今年の上映会場は1カ所増えて計4カ所となった。また、ナイトマーケットの開催や、内装をおしゃれにスタイリングしたグランピングテントを設置し、浜辺で宿泊できるエリアを設けるなどの新しい試みもあった。
海上にクレーンで吊るした巨大スクリーンでの映画上映をメーンイベントとするうみぞら映画祭は、数ある映画祭のなかでも、「インスタ映え」する映画祭だといえる。また、芸術性の追求や新人監督の発掘を目的とする映画祭も多いなか、海の映画館で上映された映画は、いずれも公開済みのヒット作だ。芸術性や新人の発掘などよりもどちらかといえば、観客受けを意識した映画が上映作品として選ばれている。
ただ、まず娯楽ありきかと問われれば、それだけではない。淡路島短編映画祭の優秀作品の上映や、淡路島の紹介映画、淡路島ロケ作品などと、娯楽映画のヒット作をバランスよく上映することによって、地域の魅力を発信することや、アマチュアが映画を制作するきっかけづくりの機能を発揮している。
洲本市内の4つの会場で映画を上映することによって、市外からの観客は洲本市内を移動することによって、同市の魅力に触れることができる。また、淡路島の食材を使った料理を提供する飲食ブースや地元の産業生産物を制作するワークショップなどを実施することによって、地域の魅力を参加者に伝えようとする取り組みもなされている。
海の映画館での映画上映時には、浜辺の上映スペースがほぼ満席となったことからもわかるように、うみぞら映画祭の知名度は年々高まってきている。3回の開催を記録し、今回で映画祭としてのフォーマットがほぼ固まったといえるだろう。変えるべきものと変えてはならないものとをしっかりと区別し、今後も末永く映画祭が継続されることを期待したい。
(2018年5月20日、兵庫県洲本市大浜海水浴場、うみぞら映画祭2018)(矢澤利弘)
ジョニー・デップ
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
2017-11-08
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