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父親と息子の確執は人類における永遠のテーマである。カトリン&アンドレス・マイミック夫婦監督のエストニア映画『私と同じ顔の、おじさん』は息子の視点から父親との確執と和解を描く。

主人公フーゴーは音楽評論家で、離婚の経験からなかなか立ち直れないでいる。環境を整えて書きかけの本を完成させようとしていると奔放なジャズマンの父親が転がり込んでくる。繊細な息子とがさつな父親が同居するわけだから、日常生活もままならない。よくありそうな親子の話だが、エストニアの荒涼とした風景をバックに、フーゴーの心の動きの描写がきめ細かいので引き込まれる。仲が悪く見えても、親はきちんと息子の成長を見つめている。主人公の心がついに解放される瞬間がなんとも清々しい。


(2018年7月1日午後2時、広島市映像文化ライブラリー)(矢澤利弘)