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もしあなたが映画祭のプログラマーだったなら、この映画を自分の映画祭で上映したくて仕方がなくなるだろうし、もしあなたが配給・宣伝会社の人間だったなら、自分の会社で配給したくてうずうずすることだろう。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭国際コンペティションの1本として上映された中川奈月監督の『彼女はひとり』。60分に凝縮された世界には1秒たりとも無駄がない。怖い映画なのだろうか。それとも泣ける映画なのだろうか。あるいは癒される映画なのだろうか。この映画はそれらのすべてである。人間のありとあらゆる感情を揺さぶる映画なのだ。

この映画は中川監督が立教大学大学院映像身体学研究科の修了制作として作り、その後、東京藝術大学大学院で学びながら完成させた。一歩引いた目でキャラクターたちを捉えつつも、エモーショナルな作品に仕上がっている。

主演の福永朱梨は感傷的な女子高校生をリアルに演じる。映画の中のキャラクターのイメージ=役者本人のキャラクターと勘違いしてしまいそうになる程、キャラクターの作り込みは完璧だ。この映画のキャラクターは全員が何かしらの心の闇を抱えている。そんな人物達が妙に愛おしく感じられるのは、役者達の演技力の賜物だろう。


(2018年7月16日午後9時、MOVIX川口、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭)(矢澤利弘)



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2018-03-07