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終戦直後、広島各地で演奏され、廃墟から復興に向かう人々の心の支えとなったクラシックの名曲を演奏するコンサートが22日、広島市の広島文化学園HBGホールであった。指揮は園田隆一郎、管弦楽と合唱団はこのコンサートのために組織された市民が参加する「平和を運ぶオーケストラ」と「平和を運ぶ合唱団」。

シューベルトの交響曲第7番「未完成」でコンサートの幕は開け、続くサラサーテの「チゴイネルワイゼン」は、広島出身の世界的バイオリニスト正戸里佳がソロをつとめた。超絶技巧で有名な難曲であり、左手で弦をはじくピチカートが散りばめられためまぐるしいバイオリンの展開に、オーケストラも見事に追随した。
アンコールではマスネの「タイスの瞑想曲」をバイオリンと管弦楽で美しく演奏した。

後半はヘンデルのオラトリオ「メサイア」より「ハレルヤ」とベートーベンの交響曲第9番を演奏した。合唱はオーディションで選ばれたメンバーからなる「平和を運ぶ合唱団」に東京オペラシンガーズ、広島少年合唱隊、エリザベト音楽大学付属音楽合唱団ブエリカンタンテスも加わった大編成だった。第九のソロは、ソプラノ馬場裕子、アルト小林由佳、テノール与儀巧、バス萩原潤。

一般的な市民合唱団は女性パートの人数が多く、男性パートの人数が少ない。対して今回の合唱団は、男女の人数のバランスが拮抗しており、特に男性パートの声が響き渡り、力強いハーモニーを作り出していた。

パンフレットの合唱団の出演者名簿にはコーラスが趣味で昨年のこのコンサートにも出演していた松井一實広島市長の名前があったが、舞台では姿を見なかった。大雨災害の復旧に追われているのだろうか。

最後は「混声合唱とオーケストラのためのカンタータ『土の歌』」より大地讃頌の演奏があり、2時間のコンサートは幕を閉じた。


(2018年7月22日、広島文化学園HBGホール)(城所美智子)