リティ・パン監督
カンボジア出身のリティ・パン監督の『消えた画 クメール・ルージュの真実』が17日、広島市映像文化ライブラリーで上映され、上映後にはパン監督によるトークがあった。
『消えた画』は、1970年代後半、ポル・ポト率いるクメール・ルージュによる圧政と虐殺の時代を生き延びたパン監督が、カンボジアの大地から作られた土人形や当時のプロパガンダ映像を用いて、少年期の過酷な体験を語ったドキュメンタリー。パン監督は以下のように語った。
「テーマは長い間考えてきたが、なかなか映像化できなかった。クメール・ルージュの虐殺という集団の記憶と、個人的な記憶とを共有してもらう方法が長い間見つけられなかった。
今日は4月17日だが、1975年4月17日はまさしくクメール・ルージュがプノンペンに入った日だ。その日から1979年1月までに人工の4分の1以上に当たる200万人が犠牲になった。集団の犯罪を伝えるのは難しい。カンボジアの人間にとっては、家族を失ってしまったというような体験だ。子供が両親と過ごすことができなくなった。肉体的なものだけではなく、人間の尊厳やアイデンティティを失わせるものだった。
200万人の犠牲者には、200万本の映画が必要だ。映画1本で世界を変えることはできない。ただ、一人一人が何かを変える事はできるのではないか。フィクションで伝えることもあるだろうが、私には1人の俳優にどのように死ねだとかいうような演技をつけることができない。
動かない土人形が伝えたいことを語ってくれることになった。いろいろな断片を取り入れながら、土人形に魂を吹き込んだ。
劇中で使われる人形は、1人の工芸師に一体一体、何百と作ってもらった。」
( 2019年4月17日午後6時、広島市映像文化ライブラリー)(矢澤利弘)