人間が生きていくためには、いったいどれぐらいのモノがあれば必要なのだろうか。ペトリ・ルーッカイネン監督・脚本・出演の『365日のシンプルライフ』は、フィンランド人の青年が、失恋をきったけに自分の持ち物を全て貸しコンテナに預け、1日1個のモノだけで1年間過ごした ...
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『サーミの血』(『サーミブラッド』)、生きることは学ぶこと、人種差別に立ち向かう少数民族の少女の物語
いつの時代にも、どんな場所にも差別は存在する。虐げられた者たちはチャレンジすることをあきらめなければいけないのか。アマンダ・ケンネル監督の『サーミ・ブラッド』(劇場公開題『サーミの血』)は、トナカイ飼育を行う少数民族の少女の生きざまを描く。サー ...
『素晴らしきボッカッチョ』、ペストの猛威を避けた10人の男女が語る恋物語、イタリア映画祭2016
パオロ&ヴィットリオ・タビアーニ監督の『素晴らしきボッカッチョ』は、ボッカッチョの『デカメロン』をベースに、ペストが猛威をふるうフィレンツェを離れて郊外の屋敷で共同生活を始めた男女10人が、退屈しのぎに10日の間に毎日一人ずつ10話の物語を披露する物語である ...
『処女の誓い』、ありのままでいるのが一番いい、イタリア映画祭2016
人間というもの、ありのままでいるのが一番いい。ラウラ・ビスプリ監督のデビュー作『処女の誓い』は、生涯独身を誓い、男性として生きることを選んだアルバニア人の女性が自分自身を再発見していく物語だ。 欧州諸国のなかでも最貧国と言われている(言われていた)アル ...
『縄文号とパクール号の航海』、砂鉄から精製した鉄工具で丸木舟を作り、インドネシアから日本まで
第3回グリーンイメージ国際環境映像祭で25日に上映された水本博之監督の『縄文号とパクール号の航海』は、探検家、関野吉晴が企画したインドネシアから日本までの丸木舟による航海を追ったドキュメンタリー作品である。ひとくちに航海といっても、この航海 ...
『スティックス&ストーンズ』、技術とソーシャルメディアに媒介された少年の冒険
第3回グリーンイメージ国際環境映像祭で25日に上映されたアイザック・キング監督の『スティックス&ストーンズ』は技術とソーシャルメディアに媒介された少年の冒険を描いた4分間の短編アニメーション作品である。面白半分にアリの群れを踏み潰して遊ぶ少年。ちょっと視点を ...
『千年の一滴 だししょうゆ』、「うまみ」が映像で伝わってくるようだ、食と農の映画祭
(C)プロダクション・エイシア/NHKもし、だしと醤油がなかったならば、和食というものは成立しないのではないだろうか。柴田昌平監督の『千年の一滴 だし しょうゆ』は、だしと醤油をその根底から追求したドキュメンタリーである。 本作は、だしにまつわる人々の営みを ...
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』、腕利きシェフの起業物語、食と農の映画祭2015inひろしま
この映画を見た後は、無性にキューバ・サンドイッチが食べたくなるだろう。12月4日まで広島市のサロンシネマで開催されている「食と農の映画祭2015inひろしま」の1本、ジョン・ファヴロー監督の『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』は、腕利きシェフの起業物語である ...
『ステーキ・レボリューション』、ステーキの奥の深さを知る、食と農の映画祭
c 2014 LA FERME PRODUCTIONS SAS et C.PRODUCTIONS「やわらかい肉が欲しい」というのは確か『ゾンビ』の惹句の一つだったが、フランク・リビエール監督の『ステーキ・レボリューション』は、映画を観た後にまさにこんな気分にさせられるドキュメンタリー作品である。カメラ ...
『ゾウを撫でる』、映画制作を取り巻く人々の群像劇、短編ドラマの連作を10本つないだ作品
大塚千弘さん、佐々部清監督 佐々部清監督の『ゾウを撫でる』は、ある新作映画に関わる人々の、それぞれの人間模様をスケッチ風に描いていく。Youtubeで公開された8分間の短編ドラマの連作を10本つないで1本の長編映画に再構成した構造となっている。 俳優やスタッフだけ ...
『 山嶺(さんれい)の女王 クルマンジャン』、キルギスの国家的英雄を描いた入魂の一作
弱い国は滅ぶ。サディック・シェル・ニヤーズ監督の『山嶺の女王 クルマンジャン』は、キルギスの国家的英雄で、国の母ともいわれるクルマンジャン・ダトカの生涯を描く。この映画は、国家的プロジェクトで政府の支援もあり、予算は150万ドルだった。メインプロデューサーを ...
『その夏に抱かれて』、教授にレイプされた音大の女子学生、彼女は愛していたのか憎んでいたのか
グスタフ・マーラーの曲は矛盾に満ちているといわれている。そんなマーラーの曲が流れるワン・ウェイミン監督の『その夏に抱かれて』は、教授にレイプされた音楽大学の女子学生の複雑な心の動きを描いている。実話をもとにした作品で、ウェイミン監督の長編デビュー作である ...
『スウィング!』、異なる世代の3人の女性がジャズグループを結成したら - SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015
ノリのいい音楽と女性たち。これらがあるだけでエンタテインメントは成立するのではないか。チャバ・ファゼカシュ監督の『スウィング!』は、偶然レストランで出会った女3人がジャズグループを結成し、地方回りを始めるという音楽ドラマだ。 歌手の仕事を求めて首都ブダ ...
『サンタ・クロース』、サンタに扮した泥棒と少年の一夜のふれあい - SKIPシティ国際Dシネマ映画祭201
(c)QUAD FILMS 普通に生きているってなんだかいいね。アレクサンドル・コフレ監督の『サンタ・クロース』は、サンタに扮した泥棒と少年の一夜のふれあいを手際よく描く。 6歳のアントワーヌは、サンタ・クロースに興味津々だ。クリスマスの夜、寝付けないアントワーヌは、 ...
『スイミングプールの少女』、エピソードのつながりが詩的に連鎖する
子育ても大変だが、心を病んだ者の介護も大変だ。自分を犠牲にしなければとてもやっていけない重労働である。ランベルト・サンフリーチェ監督の『スイミング・プールの少女』は、小学3年生の弟と心を病んで失業中の父親を持つ17歳の少女の運命を描く。 物語性が希薄で、 ...
『幸せの椅子』、古臭いスタイルの物語が懐かしさを醸し出す
いかにも古臭い感じの宝探し物語のスタイルがどことなく懐かしさを醸し出す。カルロ・マッツァクラーティ監督の『幸せの椅子』は、有名なギャングの母親が刑務所で息を引き取る前につぶやいた言葉を手掛かりに、借金取りに追われるエステシャンと入れ墨師が宝石が隠された ...
『スペシャルデイ』、それでも夫は妻を愛せるか?
記録ビデオを思わせる一人称カメラ。デビットとクリスティーナの結婚式だ。二人が愛を誓い合おうとする瞬間、教会の天井を破ってスーパーヒーローが不時着してくる。ダニエル・パドロ監督の短編映画『スペシャルデイ』は、こんな出だしから始まるドタバタ劇だ。ネタばらしを ...
『柘榴坂の仇討』、幕末から明治へと生きた武士の心の解放
何にしても宙ぶらりんの状態というものは苦しく空しい。だから心の安らぎを得るためにはいったん「完了」させてリセットしなければならない。若松節朗監督の『柘榴坂の仇討』は、復讐劇の形を借りた主人公の心の解放の物語である。浅田次郎が2004年に発表した短編集「五郎治 ...
『時空を超えた事件』、エスプリのあるタイムスリップサスペンス
ジェルミナール・アルバレル監督の『時空を超えた事件』は、初老の刑事が過去にタイムスリップし、未解決事件に立ち向かうサスペンス映画である。フランス映画らしいエスプリのある作品に仕上がっている。初老の刑事リシャール・ケンプ(ジャン=ユーグ・アングラード)と精 ...
『清作の妻』、妻の激しい情念が戦争の愚かさをあぶりだす
誰もが戦争に行きたくないし、行かせたくもない。増村保造監督の『清作の妻』は、愛する夫を戦争で失うまいとする妻の激しい情念を描く。それが同時に戦争の愚かさをあぶりだしている。 新藤兼人の脚本により、増村監督が大正時代の秀作をリメイクした。若尾文子が妖艶で激 ...