前作『やがて来たる者へ』で一躍脚光を浴びたジョルジョ・ディリッティ監督が、主演にジャスミン・トリンカを迎えたある種のロードムービーである。途方もない悲しみを抱えた30歳のアウグスタは、新たに生きる意味を求めてブラジルに向かう。母の友人である修道女のアマゾン ...
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『浮き雲』、寡黙なミュージカルのような独特の味わい
アキ・カウリスマキの作品は寡黙なミュージカルである。『浮き雲』は、そろって失業してしまった夫婦がどん底をさまようさまを描く。 悪いことは重なるもので、いったん運に見放されると、人間というものは悪い方向へ悪い方向へと流れていく。貧すれば鈍するということわ ...
『偉大なる、しゅららぼん』、ユニークな設定とコメディタッチの演出のアンバランスさ
この映画は、コメディとして撮ったのだろうか、それともシリアスなドラマなのか。水落豊監督の『偉大なる、しゅららぼん』は、琵琶湖を挟んでいがみ合うライバル同士の一族の対立とてん末を描く。 万城目学による原作小説の設定はユニークで魅力的だ。琵琶湖畔の街で、130 ...
あいち国際女性映画祭、女性監督による短編映画募集中、7月13日まで
9月1日(土)から9日(日)まで開催されるあいち国際女性映画祭では女性監督による10〜40分のオリジナル映像作品を募集している。7月13日必着。入賞作品は映画祭で上映するとともに、グランプリと準グランプリ作品には賞金を授与する。同映画祭は1996年に開始され、今年 ...
『思いを運ぶ手紙』、片道5日、徒歩で手紙を配るブータンの郵便配達員の物語、地球環境映像祭で上映
アース・ビジョン 第20回地球環境映像祭 『思いを運ぶ手紙』(ウゲン・ワンディ監督)幸福とはいったい何なのだろう。ウゲン・ワンディ監督のブータン映画『思いを運ぶ手紙』は、ヒマラヤ山脈の国ブータンの首都ティンプーの地方都市リンシまで手紙を運ぶ郵便配達員ウゲン・ ...
『インサイド・ジョブ』、リーマンショックにいたる米国金融界の腐食の構造を丹念かつ真摯に追った社会派ドキュメンタリー
債務担保証券、合成資産担保証券、グラム・リーチ・ブライリー法、クレジット・デフォルト・スワップ。あなたはこれらの経済用語をどれだけ知っているだろうか。そして説明できるだろうか。チャールズ・ファーガソン監督・脚本の『インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる ...
『アントキノイノチ』、岡田将生と榮倉奈々が遺品整理業に、さだまさしの原作を『ヘヴンズ ストーリー』の瀬々敬久監督で映画化、今秋公開
c2011映画「アントキノイノチ」製作委員会2009年に発売され幅広い年齢層に支持された『アントキノイノチ』(さだまさし著、幻冬舎刊 )。同書が『余命1ヶ月の花嫁』、『Life天国で君に逢えたら』などで、命というテーマと向き合い続けてきた制作チームにより、映画化され、 ...
『鬼神伝』初日舞台あいさつ、石原さとみ、中村獅童らが仮面を付けて登場
(左から)宇崎竜童、石原さとみ、中村獅童、福原美穂(4月29日、新宿ピカデリー)『鬼神伝』の公開初日舞台あいさつが29日、新宿ピカデリーで行われた。声優をつとめた石原さとみと中村獅童、劇中の音楽を担当した宇崎竜童、主題歌を歌った福原美穂らが来場。石原は演じた「 ...
『アリスクリードの失踪』、3人に限定されたゲーム理論のような心理劇
(C) CINEMANX FILMS TWO LIMITED 20093人に限定された登場人物。彼らの駆け引きこそがこの映画の肝だ。J・ブレイクソン監督・脚本の密室劇『アリスクリードの失踪』は、女を誘拐する男ふたりと誘拐される女ひとりの心理劇だ。刑務所仲間のヴィック(エディ・マーサン)とダニ ...
スパイダーマンシリーズ最新作の邦題は『アメイジング・スパイダーマン』に決定、公開は2012年7月
コロンビア ピクチャーズとマーベルスタジオは、2月14日に新しい「スパイダーマン」の正式タイトルを『THE AMAZING SPIDER-MAN』と発表していたが、このたび日本公開に当たっての邦題が『アメイジング・スパイダーマン』となることが決定した。本作は2012年7月3日に3D映画 ...
『ウェイヴ』のデニス・ガンゼル監督、「ファシズムをゲームとして使うものは破滅する」
(『ウェイヴ』のデニス・ガンゼル監督、2008年11月2日、新宿バルト9、撮影:矢澤利弘)「ドイツ人はファシズムがどこに行き着くかを認識している。ファシズムの波はどんなにかっこよくても、ファシズムをゲームとして使うものは破滅するということを描きたかった」。『ウェ ...
『エリックを探して』、持つべきはほんの少しの発想の転換と友人たち
ほんの少しの気持ちの転換とほんの少しの想像力、そして気の許せる友人たちがいれば、人生は楽しい。ケン・ローチ監督の『エリックを探して』は、元気をなくしている中年の男性の再生の物語だ。夢か幻か。ある日突然、あこがれのサッカーのヒーローが現れて人生のコーチをし ...
『エクスペリメント』、脚本もいいが、エイドリアン・ブロディもフォレスト・ウィテカーもさすが上手いね
ソリッド・シチュエーションスリラーは大概にして仕掛けの面白さに拘泥することが多い。だが、ポール・シェアリング脚本・監督の『エクスペリメント』は、仕掛けよりも人々の精神状態の変化を活写している。閉鎖空間における心理実験の顛末を描いた作品である。破格の報酬が ...
『アメリア−永遠の翼−』、80年以上前の実在の女性飛行士の物語。
現代においてさえ、女性の飛行士というのは一般的とはいえないだろう。だが、1920年代にすでに大西洋を横断した女性飛行士がいたのだ。ミーラー・ナーイル監督の『アメリア−永遠の翼−』は、実在の飛行士、アメリア・イヤハートの生涯を描く。現在とは違い、ちゃちなプロペ ...
『アンチクライスト』、批評にもならないが、とにかくすごい
シャルロット・ゲンズブールの演技も狂っているし、ウィレム・デフォーの演技も狂っている。もちろん脚本も演出もだ。ラース・フォン・トリアー監督の『アンチクライスト』はプロローグ、悲嘆、苦痛、絶望、3人の乞食、エピローグという6章からなる妄想の映像化である。(201 ...
『オーケストラ!』、二つのストーリーラインが見事に交差する音楽ドラマ
ストーリーの作り方は今風だ。ラデュ・ミヘイレアニュ監督の『オーケストラ!』は、長年のギャップを経て過去の楽団員たちを集めてオーケストラを再結成するという話と、隠された関係になる親子の話が巧みに交差する構造となっている。名バイオリニスト、アンヌ=マリー・ジ ...
『エッセンシャル・キリング』、ひたすら無言の逃走劇
実質、ヴィンセント・ギャロの一人芝居。イエジー・スコリモフスキ監督の『エッセンシャル・キリング』は、アフガニスタン駐留の米軍に捕えられたモハメドの逃亡劇だ。主人公は雪に覆われた森をひたすら無言で逃亡する。生きるために必要な殺人を犯すのは仕方がない。全編に ...
『赤とんぼ』、少女たちが廃線をたどる冒険に出発するというコンセプトは面白いのだが
少女レイチェルが同級生の少年ふたりとともに廃線となった鉄道跡をたどる小さな冒険に出発するというコンセプトは面白いのだが。リャオ・チエカイ監督の『赤とんぼ』は、26歳になったレイチェルが当時を振り返りながら自分を見つめ直していくという構造になっているため、現 ...
『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』と『白夜行』、子供時代の隠された秘密を現在と同時進行で描いていく
©2010 「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」製作委員会©2011「白夜行」製作委員会子供の頃のトラウマと隠された過去がいかにして将来に禍根を残すか。瀬田なつき監督の『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』と深川栄洋監督の『白夜行』は過去の忌まわしい事件とその事件の ...
『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』、リアリティのなさを指摘しても野暮というもの
リアリティのなさが気になるが、日本映画にこういうのがあってもいい。中田秀夫監督の『インシテミル 7日間のデス・ゲーム』は、閉鎖された空間に閉じ込められた10人の生き残りをかけたゲームを描く。高額の時給につられて心理実験のアルバイトを引き受けた10人。色々なバ ...