「よくわからない」というのが、この映画を見た人の率直な一言だろう。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017のファンタスティック・コンペティションで上映された柘植勇人監督の『人間シャララ宣言』は、京都造形芸術大学映画学科の卒業制作作品である。 明確なスト ...
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『NORIN TEN 稲塚権次郎物語』、食糧危機を救った農の神様の伝記、食と農の映画祭
こうした映画を見るたびに、世の中には凄い人がいるものだと思わずにはいられない。稲塚秀孝監督の『NORIN TEN 稲塚権次郎物語』は、世界の小麦の70%以上の基になった「農林10号(ノーリン・テン)」の育種者、稲塚権次郎の生涯を描いた伝記映画である。農学の世界では世界 ...
『ニート選挙』、ニートが立候補するいたって真面目な選挙エンターテインメント
笠原賢人さん、鈴木公成製作総指揮 沖田光監督の『ニート選挙』はニートから後ろ盾もなく資金3万円で選挙に挑んだ人物の実話を元にした作品。ドキュメンタリータッチではなく、エンターテインメント性たっぷりの娯楽作として楽しい。 上映では、製作総指揮で映画の元になっ ...
『野火』、戦地となっている密林をさまよい歩く兵士の体験
「あー、怖かった」。上映後、観客席のどこからかこんな声が聞こえてきた。塚本晋也監督の『野火』は戦地となっている密林を生きるためにさまよい歩く兵士の体験を描く。 大岡昇平の同名の原作小説では、第二次世界大戦中のフィリピン・レイテ島が舞台となっているが、映 ...
『人間の値打ち』、「うまい」作品、パオロ・ヴィルズィ監督は恐るべし
一言で言えば「うまい」。パオロ・ヴィルズィ監督の『人間の値打ち』(Il capitale umano)は、あるひき逃げ事件を巡って交錯する2つの家族の人間模様を3人の登場人物の視点から4つの章にわけて描いている。 2008年の『見わたすかぎり人生』(Tutta la vita davanti)を ...
『眠れる美女の限界』、サイケデリックなビジュアルによるインナートリップ
ふとしたことから喧嘩を始めてしまった友人とであれば、いつでも仲直りをすることができる。でも、喧嘩をした相手がもしも死んでしまったとしたらどうだろうか。和解をする機会は永遠に失われる。もし、死んでしまった喧嘩相手が自分の親だったら。二宮健監督の『眠れる美女 ...
『夏の庭 The Friends』、一人の老人を見つめる静かな映画
一人の老人を見つめる静かな映画である。相米慎二監督の『夏の庭 The Friends』は、死について興味を持った少年たちと風変わりな老人との交流を描く。 湯本香樹実の小説が原作。小学校6年生のサッカー仲間3人は、近所に住む傳法喜八(三國連太郎)の生活を見張る。はじ ...
【イタリア映画祭】『南部のささやかな商売』、聖職の道を外れた元神父の一風変わった共同生活
ロッコ・パパレオ監督の『南部のささやかな商売』は、スターのリッカルド・スカマルチョが出演するエンターテイメント作である。ばらばらだった人びとが一つの企てをきっかけにまとまっていく様をユーモアにくるんで描く。コスタンティーノは50歳の元神父。女性を好きにな ...
『女体銃 ガン・ウーマン』、並々ならぬ力強さを感じるファンタのなかのファンタといえる痛快な復讐劇
スクリーンから観客に向けて強烈なオーラを発している映画に出会うことがある。『ゆうばり国際ファンタスティック映画祭』のオフシアター・コンペティションで審査員特別賞を受賞した光武蔵人監督の『女体銃 ガン・ウーマン』は、まさにそんな映画だ。とてつもなく力強いパ ...
那須ショートフィルムフェスティバル2012、19日から24日まで
NPO法人那須フィルム・コミッションが主催する「第7回那須国際短編映画祭(那須ショートフィルムフェスティバル2012)」が6月19日(火)から24日(日)まで、観光牧場の「那須高原 南ヶ丘牧場」(栃木県那須郡那須町湯本579)で開催される。 ...
『9<ナイン>〜9番目の奇妙な人形〜』、中核となるアイデアは実に魅力的
人類の滅んだ未来の地球で、麻の人形ロボットが破壊兵器と戦う。シェーン・アッカー監督の『9<ナイン>〜9番目の奇妙な人形〜』の中核となるアイデアは魅力的だ。もともとは監督のシェーン・アッカーが、映像を学んだUCLAの卒業制作として完成させた11分の短編アニメだっ ...
『ネムリバ』、まさに「眠れない」ようなスピーディーな展開。よそ者の視点から見た心の安らぎ
埼玉を舞台にしたすがすがしい人間模様。園田新監督の『ネムリバ』はアメリカから母親に文句を言うためにやってきたハーフの娘ミカ(小野まりえ)の添い寝サロンでの体験を描く。ミカが成田空港に到着してから埼玉にたどり着き、ネムリバで働くことになるまでのスピーディー ...
『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』、相変わらずの石井隆節が炸裂する男女の運命劇
刺殺、死体解体、児童ポルノ。保険金殺人。石井隆監督の『ヌードの夜/愛は惜しみなく奪う』は一般のモラルに反するパーツが次々と登場する。よろず代行業の男は、ある女の居所を探るように依頼される。運命に翻弄され、堕ちていった女の正体は一体誰なのか。謎を追ううちに ...
「押し付けるのではなく、テーマが静かに浮かび上がる映画にしたかった」、『孤高のメス』の成島出監督
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭参加中の成島出監督(撮影:矢澤利弘、2月27日) 『孤高のメス』(成島出監督)が2月26日、北海道夕張市で開催された「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」で一般の観客に初披露された。現役医師・ 大鐘稔彦氏によるベストセラー小説を ...
『夏時間の庭』:確かに庭の描写は清々しいのだがドラマ不在で退屈な映画
緑の草木で覆われた庭での食事。美術品に囲まれた生活。明るい陽光。オリヴィエ・アサイヤス監督の『夏時間の庭』はフランスのパリ郊外の一軒家を舞台にしている。母親が死に、遺品となった膨大な美術品をどうすればよいのかという問題を軸に物語が進行する。相続税が莫大な ...
『日本の人形劇 人形浄瑠璃』:1921年の舞台の様子は人形浄瑠璃の研究者にとっては一級の資料
1921年7月に撮影され、翌8月に東京の明治座で7日間だけ公開された松竹キネマ製作の短編映画『文楽座人形浄瑠璃』をもとに、後年、そこに数カットを付け加えてフランスに輸出されたと考えられるのが『日本の人形劇 人形浄瑠璃』である。 このフィルムは、早稲田大学 ...
『2012』:いい意味で典型的なディザスター映画。これぞアメリカ。とにかく観なければ何も始まらない。
叙事的であり、叙情的であるという典型的なアメリカ製ディザスタームービーなのだが、ローランド・エメリッヒ監督の『2012』は、いつものような一本調子ではなく、映画の時間内に見せ場をきっちり配置するという明快な構成となっている。地割れ、噴火、津波、地震、ビル ...
『南極料理人』:非日常的空間の極めて日常的な生活。特殊な状況下を愉しむ
代役として南極に送り込まれた自衛官。連距離恋愛の行く末。単身赴任の夫。原作はエッセイということもあるのだろうか。全編を通じて日常的なエピソードの積み重ねであり、ドラマ的な高揚感はない。だが、それがドキュメンタリー的な味わいを醸し出している。沖田修一監督・ ...
東京国際映画祭:「人魚と潜水夫」、ドキュメンタリーなのか、それともおとぎ話なのか。
ドキュメンタリーなのか、それともおとぎ話なのか。メルセデス・モンカーダ・ロドリゲス監督の『人魚と潜水夫』は不思議な作品だ。漁村で生まれたミスキート族のシンバッドはひ弱な子どもだったが、徐々にたくましく成長し、潜水夫となる。スーパーインポーズタイトルで、人 ...
東京国際映画祭コンペティション:「NYスタテンアイランド物語」、1つの事件に複雑に絡み合う3人の男たち
ジェームズ・デモナコ監督の『NYスタテンアイランド物語』は、1つの事件に複雑に関係する3人の人生模様を描く。クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグズ』や『パルプ・フィクション』でも同じような手法が取られているが、こういう形式は脚本がきっちりと ...