繊細で詩的な作品。ゆっくりと映像のなかへ入り込んでいくかのような錯覚に陥っていく。ピエロ・メッシーナ監督の『待つ女たち』は、シチリアの古い屋敷でひっそりと暮らす女性が、パリからやってきた息子の恋人と一緒に、息子 ...
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『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』、さえない泥棒が真のヒーローとして目覚める姿を描く、イタリア映画祭2016
イタリア映画祭2016で上映されたガブリエーレ・マイネッティ監督の『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』は、偶然の出来事で超人的な力が備わってしまったさえない泥棒が真のヒーローとして目覚める姿を描く。ありえない状況のなか、リアルな人間像が描かれている。 永井豪原 ...
『未熟なざくろ』
ざくろは小さな一粒ずつの実がつながって、ひとつの大きな果実になっている。これはまるで人と同じだ。小さな一人ずつがつながればなんでもできるのである。マジドレザ・モスタファウィ監督の『未熟なざくろ』は、一組の若い夫婦の苛酷な人生を描く。モスタファウィ監督の長 ...
『牝狐リザ』(『リザとキツネと恋する死者たち』)、日本語が飛び交うハンガリーのブラックコメディ映画 - SKIPシティ国際Dシネマ映画祭
ハンガリー映画の『牝狐リザ』(カーロイ・ウッイ・メーサーロシュ監督)(劇場公開時邦題:『リザとキツネと恋する死者たち』)は、日本マニアの女性の周囲で、彼女に興味を持った人々が次々と怪死していくという事件をユーモラスに描いたブラックコメディである。ぶっ飛 ...
『モンテビデオの奇跡』、世界初のサッカーW杯で活躍したユーゴスラビアチームを描く群像劇 - SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015
(c)Intermedia Network 事実に基づいた童話のような映画。ドラガン・ビエログルリッチ監督の『モンテビデオの奇跡』は、南米ウルグアイで1930年に開催された世界初のサッカーワールドカップで活躍したユーゴスラビアチームの ...
『緑はよみがえる』、80分の上映時間のなかに、オルミは戦争の無意味さを封じ込めた
戦争は怖い。そして無意味だ。それを伝えるだけでも、この映画の価値がある。エルマンノ・オルミ監督の『緑はよみがえる』は1917年の冬、激戦地の一つだった北イタリアのアジアーゴ高原におけるイタリア軍の小隊の一夜を描く。 戦争映画といっても、大雪で覆われた塹壕の ...
『もうしません!』、メイキングビデオのような構成が不思議な感覚を醸し出す
モキュメンタリーと言ってしまってもいいのだろうか。井野瀬優監督の『もうしません!』は、ある映画の制作過程をドキュメンタリー風に追ったように作られた負け組3人の人生模様を描くドラマである。リスナーが100人もいないような売れないインターネットラジオ局のMC、自宅 ...
ゆうばりファンタ映画祭グランプリ『メイクルーム』、AV撮影現場のメイクルームでの1日を描いたシチュエーションコメディ
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015のオフシアター・コンペティションでグランプリを受賞した森川圭監督の『メイクルーム』は、AV(アダルトビデオ)撮影現場のメイクルームでの1日を描いたシチュエーションコメディである。描かれるのはメイクルーム一室のみで、カメ ...
『めぐり逢わせのお弁当』、普遍的な文通のお話をインド風の味付けでアレンジした佳作
会ったことのない男女が、相手を知らないまま、ふとしたことがきっかけとなって文通を始める。文通でなくてもいい。パソコン通信だったり、電子メールだったり、チャットやネット掲示板への書き込みなどでもいい。いつしかお互いに惹かれ合い、実際に直接会ってみたいと思う ...
『マフィアは夏にしか殺らない』、長年に渡る片思いの恋の行方と史実との見事な絡み合い
長年に渡る片思いの恋の行方と史実との絡み合いが涙腺を刺激する。ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督の『マフィアは夏にしか殺(や)らない』は、マフィアによる殺人の連鎖と一人の子供の成長劇を見事に折り合わせたユニークな作品に仕上がっている。 『ペッピーノ ...
『ミエーレ』、彼女の行為は正義なのか、それとも単なる自殺幇助に過ぎないのか。
彼女のしていることは正しいことなのだろうか。それとも、まやかしの正義なのだろうか。ヴァレリア・ゴリーノ監督の『ミエーレ』は、死を望む助かる見込みのない病人に薬物を提供して、安楽死のサポートをするという非合法のビジネスに携わっている女性イレーネの心の葛藤 ...
【イタリア映画祭】『マフィアは夏にしか殺(や)らない』、笑いと風刺をちりばめつつ、ラブストーリーとマフィアにまつわる史実が絶妙に絡み合う
『マフィアは夏にしか殺(や)らない』は、ジョルダーナ監督の『ペッピーノの百歩』で助監督の経験を持つピエルフランチェスコ・ディリベルトの監督デビュー作である。 1970年代のシチリアが舞台。小学生のアルトゥーロは転校生のフローラに一目惚れする。恋を成就させよう ...
【イタリア映画祭】『無用のエルネスト』、60年代以降の史実も盛り込んでイタリア社会を振り返る
『無用のエルネスト』は、『恋愛マニュアル』シリーズが人気を博すジョヴァンニ・ヴェロネージ監督によるハートウォーミングな喜劇である。とりたてて才能はないが、家族や友達を大切にする正直者のエルネストは、生きていくために室内装飾、調理、引っ越し、ドライバー、エ ...
【イタリア映画祭】『ミエーレ』、女優のヴァレリア・ゴリーノが監督に挑んだ長編第1作
『ミエーレ』は、女優として輝かしいキャリアを誇るヴァレリア・ゴリーノが監督に挑んだ長編第1作である。 学生を装うイレーネには、裏の顔があった。回復の見込みがなく、尊厳死を望む末期の病人に薬物を提供していたのだ。イレーネは、自殺幇助という非合法ビジネスに ...
『マッチ工場の少女』、憂鬱な女はいかにして心を解放させるのか
抑圧された人間が抑圧から解放された瞬間は美しい。アキ・カウリスマキ監督の『マッチ工場の少女』は、抑圧された生活を送る女性の憂鬱と彼女の心の解放を描く。 カタカタと音を立てて 単調な動きをするマッチ製造機。主人公の女性イリス(カティ・オウティネン)はマッチ ...
浅野忠信ハリウッド初出演作『マイティ・ソー』、7月2日に公開
「スパイダーマン」「アイアンマン」を世に送り出してきたマーベル。同社で最も人気の高いキャラクターの一つ「マイティ・ソー」が、マーベル作品初の3Dアクション超大作として映画化された。日本では7月2日(土)から丸の内ルーブルほか全国でロードショーされる。 神の世 ...
『未来の記録』、完成を目指さない映画というコンセプトで撮られた作品の不思議な感覚
ノートに刻まれた過去の記憶。頭の中の記憶は時とともに薄れていくが、ノートに記録された記憶は消えることがない。岸建太朗監督の『未来の記録』は過去、現在、未来という3つの時制を平行して描く。昨年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の長編コンペティションで上映され、TA ...
『魔法使いの弟子』、時空を超えた魔法使い版の大掛かりな「電車男」。ビルドゥングスロマンを堪能せよ
(C)2009DisneyEnterprises,Inc.andJerryBruckheimer,Inc.AllRightsReserved.物理学オタクの青年が魔法使いとして成長するまでのビルドゥングスロマン。ジョン・タートルトーブ監督の『魔法使いの弟子』は、冴えない青年の大掛かりな成長物語である。太古の昔の魔法使いたちの ...
『未来の記録』、頭の中の記憶は時とともに薄れていくけれど、ノートに書かれた記憶は消えることがない。
ノートに刻まれた過去の記憶。頭の中の記憶は時とともに薄れていくが、ノートに記録された記憶は消えることがない。岸建太朗監督の『未来の記録』は過去、現在、未来という3つの時制を平行して描く。廃屋となったフリースクールに引っ越ししてきた男女二人。部屋に散らばる ...
『マイ・ブラザー』、人を殺めたという心の傷は簡単に癒えることはない
戦争が心の奥底へ与えた傷。人が人を殺すこと。ジム・シェリダン監督の『マイ・ブラザー』は、性格の異なる兄弟の対比を通じて、戦争が人々の心に与えた傷をあぶり出す。(2010年6月26日、午後7時10分、新宿武蔵野館2)2010-80 ...