北極圏にあるノルウェーの都市ロングイエールビーンは、スヴァールバル諸島に位置し、100年前から石炭採取が経済を支えている。マニュエル・デイラー監督の『ロングイェールビーン 極北の街(仮題)』は、地政学的に環境保護が運命付けられている北極圏にありながら、石炭 ...
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『ローマ法王になる日まで』(『フランチェスコと呼んで−みんなの法王』)、法王フランシスコの激動の半生、イタリア映画祭2016
何よりも法王の人物像に惹かれる。ダニエーレ・ルケッティ監督の『フランチェスコと呼んで−みんなの法王』(劇場公開タイトル『ローマ法王になる日まで』)は、イタリア人移民の子として、1936年にアルゼンチンの首都ブエノ ...
『レオパルディ』、19世紀の大詩人ジャコモ・レオパルディの数奇な人生を描く
天才というものはいつの時代でも普通の人間とは違う。だが、すべての面で普通でないかと言われると、そうではない。マリオ・マルトーネ監督の『レオパルディ』は、19世紀の大詩人ジャコモ・レオパルディの数奇な人生を描く。早熟の天才といっても、苦しみも喜びもある。本 ...
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』、無名の人びとの生活をパッチワークのように描く
イタリアのローマをドーナツ状に取り巻くように作られている環状高速道路GRA。ジャンフランコ・ロージ監督の『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』は、その沿線に住む様々な一般人の生きざまを捉えたドキュメンタリーである。救急隊員、ヤシの樹の音を観察する植物学者、ウナ ...
『ロッキー・ザ・ファイナル』、きれいごとでいいんだよ、過去の栄光にすがりついたっていいじゃないか
映画なんだから、きれいごとでいいんだよ。人間、誰もが歳を取る。過去の栄光にすがりついたっていいじゃないか。シルヴェスター・スタローン主演・監督の『ロッキー・ザ・ファイナル』は、老境に入った名ボクサーが今を生きる姿を描く。『ロッキー』シリーズの第6作目。第1 ...
【イタリア映画祭】『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』、環状線に沿って暮らす人々を描いた叙情的ドキュメンタリー
ジャンフランコ・ロージ監督の『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』は、ヴェネチア国際映画祭でベルナルド・ベルトルッチや坂本龍一など審査員から満場一致の絶賛を浴びて金獅子賞を受賞した作品。ローマを囲む高速道路GRA。その環状線に沿って暮らす愛すべき人々の物語を叙 ...
『リュウグウノツカイ』、すべてがアドリブではないかと勘違いさせるほど鮮度の高い青春ファンタジー
女子高生がキャーキャー騒いでいるのを見るのが好きな人は多いだろうか。あまり多くはあるまい。どちらかと言えば、嫌悪感を持つ場合のほうが多いのではないだろうか。 ウエダアツシ監督の『リュウグウノツカイ』は、2008年にアメリカの小さな漁村で起きた女子高生の集団 ...
【書評】「ローマの休日」を仕掛けた男−不屈の映画人ダルトン・トランボ
「ローマの休日」を仕掛けた男 - 不屈の映画人ダルトン・トランボ [単行本]ピーター・ハンセン中央公論新社2013-05-09赤狩りで追放されたが、偽名でB級映画を作り続け、『スパルタカス』『ジョニーは戦場に行った』などの名作で甦った脚本家ダルトン・トロンボの生涯と彼の ...
『レオニッドの物語』、放射能は静かに忍び寄り、人々に死を運んで来る、地球環境映像祭にて上映
アース・ビジョン 第20回地球環境映像祭 『レオニッドの物語』(ライナー・ルートヴィヒ監督)本当の悪魔は目に見えない。静かに忍び寄り、人々に死を運んで来る。ライナー・ルートヴィヒ監督の『レオニッドの物語』は、ささやかな楽園を求め暮らしていたソビエトのある家族 ...
『ランゴ』、キャラクターに俳優の感情を吹き込むエモーション・キャプチャー、自分探しを続けるさすらいのカメレオンの物語、10月22日公開
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の名コンビ、ジョニー・デップとゴア・ヴァービンスキーがタッグを組んだ最新作『ランゴ』(10月22日から新宿バルト9ほか全国ロードショー)は、自分探しを続けるさすらいのカメレオン"ランゴ"の物語だ。カメレオン俳優といわれるジョニー・ ...
『リーニャ・ヂ・バッシ』のダニエラ・トマス監督、「わたしが決めてしまえるほど、人生は単純ではない」
(ダニエラ・トマス監督、2008年11月22日、東京有楽町・朝日ホール、撮影:矢澤利弘)『リーニャ・ヂ・バッシ』はサッカー選手の夢やそれぞれの希望を抱く4兄弟と母親のドラマを描いたブラジル映画。カンヌ映画祭で主演女優賞を受賞している。ウォルター・サレス監督と共に ...
『ラスト・ソルジャー』、ローカル色の強いジャッキー・チェン主演作
中国の戦国時代劇なので、インターナショナルな映画ではなく、どちらかといえばローカル色の強い作品だろう。ディン・シェン監督の『ラスト・ソルジャー』は敵同士のふたりが旅をするうちに打ち解け合っていくという構造のロードムービーである。『ベスト・キッド』のような ...
『恋愛戯曲〜私と恋におちてください。〜』、舞台劇としては冴えているのだが、映画としてはいかがなものか。
舞台劇であれば面白いはずだが。鴻上尚史監督の『恋愛戯曲〜私と恋におちてください。〜』は、現実感の無いラブコメディだ。深田恭子が脚本家の大先生という設定がそもそも無理がある。それに、深田恭子に「私と恋におちてください。」などと言われれば、そもそも断る理由な ...
『リポーター』、コンゴの貧困と虐殺、現場で取材し自分の目で見て自分の耳で聞いた話を伝える重要性
兵士にレイプされる女。自分が正しいと信じている武装勢力のリーダー。コンゴでは確実に大虐殺が行われていることは確かだ。エリック・ダニエル・メッツガー監督の『リポーター』は、ピューリッツァー賞を受賞したニューヨーク・タイムズの記者、ニコラス・クリストフのコン ...
『ルート1』、カナダからフロリダへ南下する旅を通じて当時の現代アメリカを浮き彫りにする255分間
アメリカ合衆国の右の端を北から南まで南下していくというコンセプトの確かさ。ロバート・クレイマー監督の『ルート1』は、国道を移動しながらアメリカという広大な国で生きている人々の生活をスケッチしていく。長尺なドキュメンタリーであるゆえ、上映される機会の少ない ...
『レポゼッション・メン』、主題が荒唐無稽ゆえに絵空事を愉しむ
荒唐無稽を愉しむ。ミゲル・サポクニック監督の『レポゼッション・メン』は、人工臓器の回収人を描いている。近未来、高額なローンで人工臓器を買う患者たち。住宅ローンが払えなければ、家を追い出され、自動車ローンが払えなければ、自動車を回収されるように、人工臓器の ...
『ラブリーボーン』:愛する人の死を受け入れ、事件を完了させるまでの物語
あるときは、それが自分の子供であったり、恋人であったり、夫や妻であったりするが、愛する人を失って辛いと思わない者はいないだろう。いつまでその辛さは続くのだろうか。だが、人はいつかは悲しみを忘れ、次の段階に踏み出さなければならない。ピーター・ジャクソン監督の ...
東京国際映画祭:「ライブテープ」、吉祥寺の街全体がライブハウスになる74分間
松江哲明監督の『ライブテープ』はミュージシャン、前野健太の演奏を74分間、1カットで撮影した。ドキュメンタリータッチで、一見すると行き当たりばったりで撮影されたようにも見えるが、実はきっちりと作りこまれた作品である。元旦の吉祥寺。ギターを持ちながら前野健太 ...
東京国際映画祭コンペティション:「ロード、ムービー」、スクリーンは人を集めるための魔法の布
映画のスクリーンって何なのだろう。きっと、人を集めるための魔法の布なのではないか。インドのデーウ・ベネガル監督の『ロード、ムービー』はそんな気にさせてくれるロード・ムービーだ。タイトルは『ロード、ムービー』であって、『ロード・ムービー』ではない。映画のフ ...