人生も後半に差し掛かると、ただ友人たちと一緒に過ごした時間がとても懐かしいと感じることが誰にもあるはずだ。ジュゼッペ・ピッチョーニ監督の『かけがえのない数日』は人生の岐路に立つ若い4人の女性たちのほんの数日間のロードムー ...
カテゴリ:映画レビュー
『いつだってやめられる マスタークラス』、高学歴ワーキングプアの研究者ギャングたちが今度は警察と組む、イタリア映画祭2017
研究者ギャングたちが今度はマッポの手先に。『スケバン刑事』か、はたまた『ターミネーター2』か。シドニー・シビリア監督の『いつだってやめられる マスタークラス』は、高学歴ワーキングプアの研究者たちが脱法ドラッグを密造して一儲けす ...
『切り離せないふたり』、結合双生児の姉妹は切り離さないほうが幸せなのか、イタリア映画祭2017
珍しい特殊な姿をしていることは、本人にとってよいことなのだろうか。ごく普通の姿になることで失うものも多そうだ。エドアルド・デ・アンジェリス監督の『切り離せないふたり』は結合双生児の姉妹の心と体の物語である。ビオラとデジーは腰や太ももが結合した結合双生児の ...
『幸せな時はもうすぐやって来る』、過去と現在、現実と伝説がない混ぜになった脈絡のない映像世界、イタリア映画祭2017
夢を描いたのだろうか。想像力が必要な映画である。アレッサンドロ・コモディン監督の『幸せな時はもうすぐやって来る』は、一貫したストーリーを把握するのが困難だ。ストーリーなど無いのかも知れない。だからといって、特段の映像美があるわけではない。過去と現在、現実 ...
『ピューマ』、10代のカップルが出産を迎えるまでの9カ月間の物語、イタリア映画祭
子供を産み、育てることは人生の終わりなのだろうか。ロアン・ジョンソン監督の『ピューマ』は、10代で子供を産むことになった若いカップルの出産までの9カ月間を日記風に描く。若いカップルのカテとフェッロ。カテが妊娠し、ふたりはフェッロの実家に居候することになる。ふ ...
『花咲く恋』、未成年更生施設のなかで芽生えた切ない恋のゆくえ、イタリア映画祭
最初はどうしようもない奴だと思っていたが、次第に愛おしくなってきた人間は、あなたのそばにはいないだろうか。クラウディオ・ジョバンネージ監督の『花咲く恋』は、未成年更生施設で知り合った男女の切ない恋のゆくえを描く。携帯電話強盗で生活していた少女ダフネは警察 ...
『告解』、G8財務相会議でIMF専務理事の死亡事件に巻き込まれた修道士、イタリア映画祭
修道士は懺悔で知った秘密を決して口外してはならない。ロベルト・アンドー監督の『告解』は、バルト海に面した高級ホテル内での政治的な駆け引きに巻き込まれた修道士の言動を通じて、人間のあり方を描く。ほぼホテル内だけに限定して物語が展開する静かな会話劇である。G8 ...
『ジュリアの世界』、エホバの証人をモチーフにした少女の心の解放の物語、イタリア映画祭
厳格な小さな世界で生きることを選択するのか、それとも俗だが広い世界で生きていくのか。マルコ・ダニエリ監督の『ジュリアの世界』は、エホバの証人というモチーフを使って、ある少女の心の再構築を描いた作品である。 エホバの証人の敬虔な信者である両親を持つ少女ジ ...
『愛のために戦地へ』、第二次大戦下の恋愛譚を通じてマフィアの暗部を描く、イタリア映画祭
ごく単純な恋愛譚がマフィアをめぐる激動のイタリア近現代史に昇華していく。その見事な構成と映画的筆致に脱帽せざるを得ない。ピエルフランチェスコ・ディリベルト監督の『愛のために戦地へ』は、第二次世界大戦下のシチリアを舞台に、主人公の恋愛事情を主軸にしつつ、 ...
『堕ちる』、地下アイドルにハマった中年男の悲哀を描いた快作
売れないアーティストを応援しているファンの心境というものは複雑だ。そのアーティストがもっと売れて欲しいと願う一方、自分だけのものでいて欲しいと思っていたりもする。村山和也監督の『堕ちる』は、寂れた工場で働く織物職人の主人公、耕市がふとしたきっかけで地 ...
『人間シャララ宣言』、よくわからないほど自由な作品、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭コンペティション
「よくわからない」というのが、この映画を見た人の率直な一言だろう。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017のファンタスティック・コンペティションで上映された柘植勇人監督の『人間シャララ宣言』は、京都造形芸術大学映画学科の卒業制作作品である。 明確なスト ...
『トータスの旅』、裸で暴れる夏のロードムービー、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2017グランプリ受賞作
勝手気ままに生きている兄(川瀬陽太)。自動車事故で妻を亡くし、一人で息子を育てる弟の次郎(木村知貴)。兄の婚約者(湯舟すぴか)。そして息子の登。永山正史監督の『トータスの旅』は、どこかイカレている4人が亀と一緒に結婚式を挙げる島へ向かう旅を描くひと夏 ...
『海−消えたプラスチックの謎(仮題)』、科学者たちの探索を追ったドキュメンタリー
海に漂うプラスチックはいったいどのような末路をたどるのだろうか。やがて分解されて自然に溶け込むのか、それともずっと海の底にたまり続けるのだろうか。ヴィンセント・ぺラジオ監督の『海−消えたプラスチックの謎(仮題)』は、科学者たちがプラスチックの行方を探索 ...
『ロングイェールビーン 極北の街(仮題)』、北極圏にある石炭採取の街の環境的矛盾に迫るドキュメンタリー
北極圏にあるノルウェーの都市ロングイエールビーンは、スヴァールバル諸島に位置し、100年前から石炭採取が経済を支えている。マニュエル・デイラー監督の『ロングイェールビーン 極北の街(仮題)』は、地政学的に環境保護が運命付けられている北極圏にありながら、石炭 ...
講演:「碑」から「いしぶみ」へ、原爆投下で全滅した広島の中学校1年生の遺族手記を朗読するドラマ
広島テレビが1969年に制作した原爆を題材にしたドラマ「碑」についてのレクチャー『「碑」から「いしぶみ」へ』が21日、広島県広島市の広島市映像文化ライブラリーで開催された。「碑」は原爆投下70周年にあたる2015年に是枝裕和監督によって「いしぶみ」としてリメイクされ ...
『365日のシンプルライフ』、何も持たない生活を1年間続けて見えてきたもの、食と農の映画祭2016inひろしま
人間が生きていくためには、いったいどれぐらいのモノがあれば必要なのだろうか。ペトリ・ルーッカイネン監督・脚本・出演の『365日のシンプルライフ』は、フィンランド人の青年が、失恋をきったけに自分の持ち物を全て貸しコンテナに預け、1日1個のモノだけで1年間過ごした ...
『ふたりの桃源郷』、電気もない山あいで暮らす老夫婦の生活を25年に渡って撮影、食と農の映画祭inひろしま
真の幸せとは何なのか。佐々木總監督の『ふたりの桃源郷』は、還暦を迎えた仲の良い夫婦が電気も水道も通っていない山で暮らす姿を記録したドキュメンタリーである。ローカルテレビ局の山口放送が25年に渡って撮影し、放送してきた記録映像を再編集し、87分の作品としてまと ...
『いただきます みそをつくるこどもたち』、玄米和食で子供を育てる保育園の1年間、食と農の映画祭2016inひろしま
日本人にはやっぱり和食が一番。 VIN OOTA監督の『いただきます みそをつくるこどもたち』は、福岡市にある玄米和食の給食で知られる高取保育園の1年間を撮影したドキュメンタリーである。園児たちが自らの手で味噌を作り、日本の伝統食で育っていく。高取保育園は広末涼子 ...
広島国際映画祭、ヴェッキアリやゲリンなどの短編映画コンペティションを開催
広島国際映画祭2016では12日、国際短編映画コンペティションを開催し、ノミネートされた6本の短編映画を上映した。上映後にはそれぞれの作品の監督による質疑応答が行われた。マルタ・エルナイス・ピダル監督の『ドブロ』は、グアナファト国際映画祭で最優秀短編映画賞を受賞 ...
『サーミの血』(『サーミブラッド』)、生きることは学ぶこと、人種差別に立ち向かう少数民族の少女の物語
いつの時代にも、どんな場所にも差別は存在する。虐げられた者たちはチャレンジすることをあきらめなければいけないのか。アマンダ・ケンネル監督の『サーミ・ブラッド』(劇場公開題『サーミの血』)は、トナカイ飼育を行う少数民族の少女の生きざまを描く。サー ...