海に漂うプラスチックはいったいどのような末路をたどるのだろうか。やがて分解されて自然に溶け込むのか、それともずっと海の底にたまり続けるのだろうか。ヴィンセント・ぺラジオ監督の『海−消えたプラスチックの謎(仮題)』は、科学者たちがプラスチックの行方を探索 ...
カテゴリ:映画レビュー
『ロングイェールビーン 極北の街(仮題)』、北極圏にある石炭採取の街の環境的矛盾に迫るドキュメンタリー
北極圏にあるノルウェーの都市ロングイエールビーンは、スヴァールバル諸島に位置し、100年前から石炭採取が経済を支えている。マニュエル・デイラー監督の『ロングイェールビーン 極北の街(仮題)』は、地政学的に環境保護が運命付けられている北極圏にありながら、石炭 ...
講演:「碑」から「いしぶみ」へ、原爆投下で全滅した広島の中学校1年生の遺族手記を朗読するドラマ
広島テレビが1969年に制作した原爆を題材にしたドラマ「碑」についてのレクチャー『「碑」から「いしぶみ」へ』が21日、広島県広島市の広島市映像文化ライブラリーで開催された。「碑」は原爆投下70周年にあたる2015年に是枝裕和監督によって「いしぶみ」としてリメイクされ ...
『365日のシンプルライフ』、何も持たない生活を1年間続けて見えてきたもの、食と農の映画祭2016inひろしま
人間が生きていくためには、いったいどれぐらいのモノがあれば必要なのだろうか。ペトリ・ルーッカイネン監督・脚本・出演の『365日のシンプルライフ』は、フィンランド人の青年が、失恋をきったけに自分の持ち物を全て貸しコンテナに預け、1日1個のモノだけで1年間過ごした ...
『ふたりの桃源郷』、電気もない山あいで暮らす老夫婦の生活を25年に渡って撮影、食と農の映画祭inひろしま
真の幸せとは何なのか。佐々木總監督の『ふたりの桃源郷』は、還暦を迎えた仲の良い夫婦が電気も水道も通っていない山で暮らす姿を記録したドキュメンタリーである。ローカルテレビ局の山口放送が25年に渡って撮影し、放送してきた記録映像を再編集し、87分の作品としてまと ...
『いただきます みそをつくるこどもたち』、玄米和食で子供を育てる保育園の1年間、食と農の映画祭2016inひろしま
日本人にはやっぱり和食が一番。 VIN OOTA監督の『いただきます みそをつくるこどもたち』は、福岡市にある玄米和食の給食で知られる高取保育園の1年間を撮影したドキュメンタリーである。園児たちが自らの手で味噌を作り、日本の伝統食で育っていく。高取保育園は広末涼子 ...
広島国際映画祭、ヴェッキアリやゲリンなどの短編映画コンペティションを開催
広島国際映画祭2016では12日、国際短編映画コンペティションを開催し、ノミネートされた6本の短編映画を上映した。上映後にはそれぞれの作品の監督による質疑応答が行われた。マルタ・エルナイス・ピダル監督の『ドブロ』は、グアナファト国際映画祭で最優秀短編映画賞を受賞 ...
『サーミの血』(『サーミブラッド』)、生きることは学ぶこと、人種差別に立ち向かう少数民族の少女の物語
いつの時代にも、どんな場所にも差別は存在する。虐げられた者たちはチャレンジすることをあきらめなければいけないのか。アマンダ・ケンネル監督の『サーミ・ブラッド』(劇場公開題『サーミの血』)は、トナカイ飼育を行う少数民族の少女の生きざまを描く。サー ...
『浮き草たち』、爽やかなボーイミーツガール、行き詰まった二人は常に走り回る、東京国際映画祭
この映画の男と女は常に走り回っている。東京国際映画祭のコンペティション部門で上映されたアダム・レイン監督の『浮き草たち』は、何かに行き詰まり、常に動かざるを得ない男と女の出会いを描く。 いわゆるボーイ・ミーツ・ガールものに分類されよう。若きシェフのダニ ...
『俺たちとジュリア』、敗者たちの起業物語、イタリア映画祭2016
日常生活に不満を持った男たちが再起をかけて新しい事業に乗り出す。よくありそうなストーリーだが、タイトルの一部分にもなっている「ジュリア」がワンポイントになっている。 『俺たちとジュリア』は、喜劇俳優として活躍しているエドアルド・レオが監督した敗者たちの ...
『地中海』、移民の厳しさと悲劇、イタリア映画祭2016
ジョナス・カルピニャーノ監督のデビュー作『地中海』は、移民という今日的な問題にリアルな演出で迫る。カンヌ国際映画祭の批評家週間に出品されたのをはじめ、世界の多くの映画祭で上映されている。 ブルキナファソの青年2人は、より良い生活を求 めてヨーロッパに ...
『私と彼女』、同性愛関係の中年女性ふたりのロマンチックコメディ、イタリア映画祭2016
愛し合ったもの同士、恋愛をうまく回していくのは世界中どこでも同じ。性別も超越するものなのだ。マリア・ソーレ・トニャツィ監督の『私と彼女』は、中年の同性愛関係にあるふたりの女性の人間模様をロマンチックかつ軽快に描いている。 決して若くない同性愛者の女性ふ ...
『待つ女たち』、待ち続ける悲しみを詩的に描く静かな作品、イタリア映画祭2016
繊細で詩的な作品。ゆっくりと映像のなかへ入り込んでいくかのような錯覚に陥っていく。ピエロ・メッシーナ監督の『待つ女たち』は、シチリアの古い屋敷でひっそりと暮らす女性が、パリからやってきた息子の恋人と一緒に、息子 ...
『オレはどこへ行く?』(『Viva!公務員』)、公務員に固執する男を描く痛快コメディ、イタリア映画祭2016
ジェンナーロ・ヌンツィアンテ監督の『オレはどこへ行く?』(公開題名『Viva!公務員』)は、終身雇用で気軽で安定している公務員という職を満喫していた40歳間際の独身男ケッコが、リストラ目的の過酷な転勤辞令にもめげず、公務員という職にしがみつくうちに、新たな人生 ...
『あなたたちのために』、あるプロンプターの女性の心の再生をカラーとモノクロの映像で描く、イタリア映画祭2016
ジュゼッペ・M・ガウディーノ監督の『あなたたちのために』は、テレビドラマの制作現場でプロンプターとして働く女性アンナの心の再生を描いている。主演のヴァレリア・ゴリーノは、この映画でヴェネチア映画祭の最優秀主演女優賞を受賞。ドキュメンタリー映画を数多く手が ...
『ローマ法王になる日まで』(『フランチェスコと呼んで−みんなの法王』)、法王フランシスコの激動の半生、イタリア映画祭2016
何よりも法王の人物像に惹かれる。ダニエーレ・ルケッティ監督の『フランチェスコと呼んで−みんなの法王』(劇場公開タイトル『ローマ法王になる日まで』)は、イタリア人移民の子として、1936年にアルゼンチンの首都ブエノ ...
『素晴らしきボッカッチョ』、ペストの猛威を避けた10人の男女が語る恋物語、イタリア映画祭2016
パオロ&ヴィットリオ・タビアーニ監督の『素晴らしきボッカッチョ』は、ボッカッチョの『デカメロン』をベースに、ペストが猛威をふるうフィレンツェを離れて郊外の屋敷で共同生活を始めた男女10人が、退屈しのぎに10日の間に毎日一人ずつ10話の物語を披露する物語である ...
『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』、さえない泥棒が真のヒーローとして目覚める姿を描く、イタリア映画祭2016
イタリア映画祭2016で上映されたガブリエーレ・マイネッティ監督の『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』は、偶然の出来事で超人的な力が備わってしまったさえない泥棒が真のヒーローとして目覚める姿を描く。ありえない状況のなか、リアルな人間像が描かれている。 永井豪原 ...
『処女の誓い』、ありのままでいるのが一番いい、イタリア映画祭2016
人間というもの、ありのままでいるのが一番いい。ラウラ・ビスプリ監督のデビュー作『処女の誓い』は、生涯独身を誓い、男性として生きることを選んだアルバニア人の女性が自分自身を再発見していく物語だ。 欧州諸国のなかでも最貧国と言われている(言われていた)アル ...
『縄文号とパクール号の航海』、砂鉄から精製した鉄工具で丸木舟を作り、インドネシアから日本まで
第3回グリーンイメージ国際環境映像祭で25日に上映された水本博之監督の『縄文号とパクール号の航海』は、探検家、関野吉晴が企画したインドネシアから日本までの丸木舟による航海を追ったドキュメンタリー作品である。ひとくちに航海といっても、この航海 ...